2021-01-01から1年間の記事一覧

鈴木其一の蝉|根津美術館蔵「夏秋渓流図屏風」

重要文化財指定記念特別展 鈴木其一・夏秋渓流図屏風 ■2021年11月3日〜12月19日■根津美術館 根津美術館は、昨年、2020年の晩秋、公益財団法人としての設立80周年を記念して、所蔵する国宝や重要文化財を一気に展示するという豪勢な特別展を開催しました。鈴…

福富太郎コクレション「眼の嗅覚」

コレクター福富太郎の眼 昭和のキャバレー王が愛した絵画 ■2021年11月20日〜2022年1月16日■あべのハルカス美術館 北野恒富の「道行」と共に、この展覧会を代表する作品として、図録の表紙にも採用されている鏑木清方の「妖魚」。 六曲一隻のこの大型金屏風を…

デザイナーとしての堂本印象|堂本印象美術館

特別企画展 生誕130年 描く・飾る・デザインする ー堂本印象の流儀ー ■2021年12月3日〜2022年3月21日■京都府立堂本印象美術館 堂本印象が京都で誕生したのは1891(明治24)年12月25日。 クリスマスに生まれた日本画家ということになります。 生誕130年を記念し…

強羅環翠楼の古典湯船|神奈川県 箱根温泉郷

箱根には紛らわしい名前の老舗宿が四軒あります。 湯本の萬翠楼福住、塔ノ沢の福住楼と環翠楼、そして強羅の強羅環翠楼。 名前が似通っていますが、現在、経営は別々で特に関係が深いわけではありません。四軒全て宿泊したことがあります。 いずれも老舗旅館…

青木年雄の鐘馗さん|ミネアポリス美術館展

ミネアポリス美術館 日本画の名品 ■2021年9月18日〜12月12日■MIHO MUSEUM 室町から大正まで、90点を超える日本画が展観されています。 ミネアポリス美術館は現在約9500点の日本美術作品を所蔵。 特に近年、日本美術関連の収蔵品を急増させていて、アメリカに…

デザイナーとしての木島櫻谷

木島櫻谷 ー 究めて魅せた『おうこくさん』 ■2021年10月23日〜2022年1月10日■福田美術館 嵯峨嵐山文華館 (二館共催) 近年、主に泉屋博古館が牽引してきた木島櫻谷再評価のムーヴメント。 今秋はすでにその泉屋博古館が、旧住友本邸を飾った四季の大屏風をメ…

幸野楳嶺 最後の大仕事

大谷大学博物館2021年度特別展 東本願寺と京都画壇 ■2021年11月2日〜12月18日 近代京都画壇に関する文書を読んでいると、具体的な代表作の絵面はすぐイメージできないのに、名前だけはよく目にする人がいます。幸野楳嶺(1844-1895)。四条派の本流を受け継い…

ブリンキー・パレルモの色と形

ボイス+パレルモ ■2021年10月12日〜2022年1月16日■国立国際美術館 今年2021年4月、豊田市美術館からスタートしたヨーゼフ・ボイスとブリンキー・パレルモ、師弟によるコラボレーション展。 埼玉県立近代美術館での展示を経て、中之島の国立国際美術館に巡回…

円山公園 長楽館の凝集美

祇園、円山公園の南に位置する長楽館。 すぐ隣りにそびえ立つ伊東忠太設計の祇園閣が放つ異形折衷美の毒気にあてられた後にこの洋館を訪れると、どこかほっとします。 開放的な前庭と、軽やかにまとめられた破綻のないルネサンス様式の外観。 円山公園の一角…

祇園閣と伝道院 その内部

京都市京セラ美術館で開催されている「モダン建築の京都」展(2021年9月25日〜12月26日)。 2021年秋、この展覧会とタイアップした企画が京都市観光協会によって催されました。展覧会で取り上げられた伊東忠太設計による「祇園閣」と「本願寺伝道院」。 通常、…

増田友也の百万遍

企画展 増田友也の建築世界 - アーカイブスに見る思索の軌跡 ■2021年10月27日〜12月12日■京都大学総合博物館 百万遍のランドスケープを決定づけている大きな要素の一つ。 それは言うまでもなく京都大学総合体育館です。 設計は増田友也(1914-1981)。 1972(昭…

四君子苑と北村美術館の重奏美

河原町今出川の東南、ミスタードーナツの角を東に入ったところにこっそり佇む北村美術館。今年の秋季展(2021年9月11日〜12月5日)は「秋懐」と題され、宗達の「牛図」、利休の筆による掛物などを配しつつ、秋めいた茶道具の取り合わせを展示しています。 中で…

上野リチと晩期ウィーン工房

上野リチ: ウィーンからきたデザイン・ファンタジー ■2021年11月16日〜2022年1月16日■京都国立近代美術館 上野リチ(Felice Rix-Ueno)は1893年、ウィーンで生まれたオーストリア人デザイナー。 両親は共にユダヤ系です。 1967年、京都で亡くなっています。 以…

赤山禅院 紅葉下の神仏大集合

先日まで東博で開催されていた「最澄と天台宗のすべて」展(2021年10月12日〜11月21日)では、最澄はもちろんですが、彼の後継者たちにも強く焦点があてられていました。 第三代天台座主・円仁は、円珍と並び、天台宗における密教、すなわち台密を完成させたと…

法界寺の秘仏 薬師如来と截金の美

東京国立博物館で開催された特別展「最澄と天台宗のすべて」(2021年10月12日〜11月21日)。 滅多に見ることができない非常にレアな仏像が展示されていました。 日野、法界寺の本堂である薬師堂に安置されている薬師如来立像(重文)。 秘仏です。 前回特別公開…

山県館の「ぬる湯」|山梨県 川浦温泉

ぬる湯の極楽風呂。 山県館(やまがたかん)の魅力は全館の湯船に溢れる源泉そのものに尽きると思います。 数回リピートしている山梨、川浦温泉の一軒宿です。 yamagatakan.com 笛吹川上流域の山間にあり、西沢渓谷もすぐ近くという、まあまあな秘境エリアにあ…

ピエロ・ディ・コジモ「狩りの場面」

メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 ■2021年11月13日〜2022年1月16日■大阪市立美術館 おそらく今年度最大の西洋美術系ブロックバスター、メトロポリタン美術館展が始まりました。 まず天王寺の大阪市立美術館、来年初春には乃木坂の国立新美術館に巡回…

八木一夫が見たもの

キュレトリアル・スタディズ15 : 八木一夫の写真 ■2021年11月11日〜2022年1月16日 ■京都国立近代美術館 京都国立近代美術館、2021年度第4回コレクション展がはじまりました。今年生誕150年・没後90年をむかえた都路華香のミニ特集からはじまり、特別展「上野…

住友吉左衛門たちの茶碗

伝世の茶道具 ー珠玉の住友コレクションー ■2021年11月6日〜12月5日■泉屋博古館 昨年開館60周年を祝い、選りすぐりの名品展を開催した泉屋博古館(1960年開館)。 今年秋のコレクション展は茶道具の特集です。 住友家所蔵の茶道具、そのほぼ全ての受け入れを20…

畠山記念館の琳派

特別展「畠山記念館の名品ー能楽から茶の湯、そして琳派ー」 ■2021年10月9日〜12月5日■京都国立博物館 先月から始まった「畠山記念館の名品」展、11月9日から後期の展示に入れ替わりました。 驚いたのは畠山記念館コレクションを代表する桃山の異形陶器、伊…

正倉院のペーパーナイフ

第73回 正倉院展 ■2021年10月30日〜11月15日 ■奈良国立博物館 今回の正倉院展では筆などの文房具が多く出陳されています。天平の色紙見本ともいえる「色麻紙」、中国や朝鮮半島で作られた墨の塊などは1200年前の物とは思えないくらい美しく保存されていて、…

東本願寺前の噴水と「近代」の眼

現在、京都市京セラ美術館で開催されている「モダン建築の京都」展(2021年9月25日〜12月26日)では、明治以降に建てられた、いわゆる「近代建築」に焦点があてられています。 同展で紹介されている最も古い近代建築は、新島襄旧邸。 1878(明治11)年に建てられ…

山鹿清華 没後40年

近代京都の染織界を代表する一人、山鹿清華。 とても長生きをした人で、1885(明治18)年京都市に生まれ、1981(昭和56)年に亡くなっています。 今年2021年は清華没後40年ということになります。 ちょうど京都市京セラ美術館では、「コレクションとの対話」と題…

星マンダラと「生身供の破裂」|東寺宝物館

2021年度秋季特別公開 「東寺の星マンダラ 除災招福の祈り」 ■2021年9月20日〜11月25日■東寺宝物館 タイトルにある星マンダラ(星曼荼羅)とは「北斗曼荼羅」ともよばれ、無病息災を祈願する密教修法の一つ「北斗法」で用いられる図像です。 東寺の「北斗曼荼…

京都市美術館「対話」展にみる加藤一雄と髙橋耕平

京都市京セラ美術館開館1周年記念展「コレクションとの対話:6つの部屋」 ■2021年10月9日〜12月5日 2020年のリニューアルオープンがまともにCOVID-19パンデミックと重なり、激しく出鼻を挫かれた京都市京セラ美術館。 一年たって、落ち着いて足元をみてみよう…

冷泉家住宅内部公開と天明の大火

令和3年度(2021年度)・第57回京都非公開文化財特別公開が始まりました。 烏丸今出川にある冷泉家住宅の公開は10月30日から11月3日までの5日間。 9時から16時までです。 邸内奥にある土蔵・御文庫の前には、長々とスタッフからの解説を聞いている人たちで渋滞…

「和巧絶佳」展にみる同時代性

開館25周年記念「和巧絶佳展 - 令和時代の超工芸」 ■2021年9月18日〜12月5日■アサヒビール大山崎山荘美術館 昨年7月から9月にかけてパナソニック汐留美術館で開催された「和巧絶佳」展が、みやざきアートセンターでの展示を経て、京都・大山崎山荘美術館に巡…

狩野探幽と「種村肩衝」のミステリー

現在、京都国立博物館で開催されている「畠山記念館の名品」展(2021年10月9日〜12月5日)に、面白い逸話を持った茶入が展示されています。 唐物肩衝茶入「種村肩衝」。 南宋、12〜3世紀の中国で焼かれたといわれる一口です。 近江六角氏の家臣、種村刑部少輔…

曼殊院 消えた狩野探幽と受け継がれたモダン

庭園と茶室八窓軒が特に有名な曼殊院門跡ですが、建物の中には結構近世絵画も残されていて、間近に鑑賞することができます。 庫裡から入ってすぐの大玄関には狩野永徳の作と伝わる竹虎図や岸駒の孔雀など、襖絵が剥き出しのまま展示されています。 共に傷み…

狩野探幽の孔雀|二条城障壁画展示収蔵館

二条城大手門から入り、一般的な順路とは逆に右手へ折れて進むと、休憩所に隣接して障壁画展示収蔵館がその長細い白壁の姿を現します。 ここに入るには入城料と別にちょっと追加料金が必要になりますが、かつて御殿を飾っていた狩野派一門による障壁画のオリ…