2021-01-01から1年間の記事一覧

「近代」が取れた滋賀県立美術館リニューアル

VOICE-OVERリニューアル記念展 ボイスオーバー 回って遊ぶ声 ■2021年9月18日〜11月14日■滋賀県立美術館 今年6月、4年間もの休館を経てようやくリニューアルオープンした滋賀県立美術館。 館蔵品セレクションによるいわば拡大版常設展が開催されています。 リ…

本多錦吉郎と笠木次郎吉|発見された日本の風景展

発見された日本の風景 美しかりし明治への旅 ■2021年9月7日〜10月31日■京都国立近代美術館 不思議な展覧会でした。 286点に及ぶ明治期の洋画が、京近美の3階に設営された迷路のような展示スペースに延々と飾られています。 しかもこの夥しい作品群は全て一人…

木島櫻谷旧邸

現在京都市京セラ美術館で開催されている「モダン建築の京都」展(2021年9月25日〜12月26日)。 博物館や庁舎、大学といった大規模公共建築に加えて、個人住宅もいくつか取り上げられています。 その中のひとつ、日本画家木島櫻谷の旧邸が10月23日から11月28日…

木島櫻谷 四季の金屏風

木島櫻谷 四季の金屏風 - 京都画壇とともに- ■2021年9月11日〜10月24日■泉屋博古館 2013年、2017年に続く、泉屋博古館では3回目となる木島櫻谷特集。 動物画をテーマとした前回に対し、今回は巨大な屏風絵を中心に、櫻谷だけではなく、彼を取り巻いた京都画…

詩仙堂の小早川秋聲

先日京都文化博物館で鑑賞した小早川秋聲展。 会場の一角で、秋聲の画業を紹介したBSフジ制作によるドキュメンタリー番組の映像が流されていました。 番組の中では、意外な場所に秋聲の絵が飾られていることが紹介されています。 濱登久の店内に作品が展示さ…

小早川秋聲展|京都文化博物館

小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌(レクイエム) ■2021年8月7日〜9月26日■京都文化博物館 www.bunpaku.or.jp 平塚市美術館の現館長、草薙奈津子によれば、アジア太平洋戦争に最も早く従軍した日本画家が小早川秋聲なのだそうです(中公新書『日本画の歴史 現代篇…

初めての「ゴッホ展」とルドン、そしてトーロップ

ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント ■2021年9月18日〜12月12日■東京都美術館 とにかく混雑するので敬遠してきた数々の「ゴッホ展」。 今回はコロナの影響で事前予約制となったため意を決して出かけてみました。 「ゴッホ展」と名がついた展覧会に入…

「若冲と近世絵画」展|相国寺承天閣美術館

若冲と近世絵画展 ■(前期)2021年5月12日〜7月25日 (後期)8月1日〜10月24日■相国寺承天閣美術館 前期と後期、たっぷり半年をかけての相国寺近世絵画特集です。 伊藤若冲が主軸ですが、原在中、円山応挙等、見応えのある優品が取り揃えられています。 なお、前…

細見良の美意識

細見古香庵生誕120年記念「美の境地」 ■2021年8月24日〜10月17日■細見美術館 近年の細見美術館は、実業家細見家の実質的な二代目である細見實が好んだ、琳派・若冲など、江戸美術を中心とした企画が目立っていたように思います。 しかし、この美術館の礎とな…

「モダン建築の京都」展 

京都市京セラ美術館開館1周年記念「モダン建築の京都」 ■2021年9月25日〜12月26日■京都市京セラ美術館 東山キューブ 建築をテーマとした展覧会につきまとう決定的なジレンマは、絵画などと違い、本来主役となるべき建築作品そのものを実物展示することができ…

「帝国奈良博物館」 片山東熊と実務者たち

特別陳列「帝国奈良博物館の誕生」設計図と工事録にみる建設の経緯 ■2021年2月6日〜3月21日■奈良国立博物館 帝国奈良博物館(現在の奈良国立博物館「なら仏像館」)の設計者、片山東熊直筆の卒業論文が最初に展示されています。 とても几帳面に書かれた英語の…

清水三年坂美術館の小村雪岱コレクション

小村雪岱 スタイル 江戸の粋から東京モダンへ ■2021年2月6日〜4月18日■三井記念美術館 肉筆画から舞台装置の原画まで。 53歳と長くはないその生涯の中で多岐にわたる仕事を残した小村雪岱(1887-1940)を回顧する企画です。 2019年末、岐阜県現代陶芸美術館か…

森田慶一 京都大学楽友会館

2021年3月7日まで京都国立近代美術館で開催されている「分離派建築会100年」展。 本展でも紹介されている、分離派建築会創立メンバーの一人である森田慶一の初期を代表する建築が、東山近衛、京都大学吉田キャンパスに隣接する一角に残されています。 www.mo…

アーティゾン美術館開館1周年

STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示 ■2021年2月13日〜5月9日■アーティゾン美術館 開館から1年。 アーティゾン美術館が最新収蔵品を含め、全館を使ってたっぷりコレクションを披露する超拡大版常設展です。 いつもは企画展として使用される2つ…

環翠楼の異界大浴場|神奈川県 箱根・塔ノ沢温泉

国道1号沿いにそびえる木造の楼閣。 福住楼と共に塔ノ沢の風格を決定付けている温泉宿です。 いかにもな老舗ですが、格式ばったところはなく、オフシーズンの平日であれば一人泊も歓迎される雰囲気。 GoToトラベルで歪んだ料金の反動からか、結構安めの料金…

木村得三郎 弥栄会館

祇園の弥栄会館は1936(昭和11)年、木村得三郎(1890-1958)の設計。 木村はこの10年ほど前、1927(昭和2)年、先斗町歌舞練場の設計も担当しています。 戦前の大林組で活躍した「劇場建築」の名手といわれる建築家。 最も有名な現存作品は大阪松竹座のファサード…

八木明「青白磁可変輪花香炉」

先日(2021年2月7日)まで京都文化博物館で開催されていた「創立75周年記念 京都工芸美術作家協会展 ―煌・KIRAMEKI―」。 陶芸に数々の優品がみられました。 八木明は1955(昭和30)年の生まれですから今年60代後半に入る京都在住の陶芸家。 京都工芸美術作家協会…

蓮華王院と伏見稲荷大社 異形のミニニマル芸術

スティーヴ・ライヒに代表れさるミニマル・ミュージックは単純化された音型の反復が生み出す不思議な中毒性を持っています。 延々と繰り返される音のパターンは装飾性やストーリー性が極力排除されることで独特の美観を聴き手に与える効果を生み出す。 「反…

信田洋「蒸発用鉄瓶」

信田洋(のぶた よう)は1902(明治35)年、日本橋に生まれた彫金家。 1990(平成2)年に亡くなっています。「蒸発用鉄瓶」は1934(昭和9)年の帝展で特選となったこの工芸家、代表作の一つです。 1962(昭和37)年、翌年の京都国立近代美術館開館にあわせて東京から移…

高台寺茶室群と分離派建築会

現在、京都国立近代美術館で開催されている「分離派建築会100年」展(〜2021年3月7日)。 www.momak.go.jp 堀口捨己による「紫烟荘」が回顧されています。 1926(大正15)年、個人宅として建設されました。 わずか2年後に焼失してしまいますが、その独特の造形が…

泉涌寺 水屋形の美

泉涌寺仏殿の東隣に「泉涌寺水屋形」(みずやかた)があります。 とても小さい建物。 1668(寛文8)年、横に建つ巨大な仏殿の再建と同時期に建てられたものとされています。 泉涌寺はかつて「仙遊寺」と称されていましたが、1226(嘉禄2)年、俊芿(しゅんじょう)に…

伊藤柏台「夜の六角堂」と昼の六角堂

現在、京都国立近代美術館のコレクション展(〜2021年3月7日)で特集されている「描かれた建物」というミニ企画。 田村宗立から下村良之介まで、多彩な「建物」に関する絵画が展示されています。 伊藤柏台(はくだい)は1896(明治29)年、京都に生まれた画家。 甲…

國府理の遺言「水中エンジン」

京都市京セラ美術館で開催されている「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989-2019)」展(〜4月11日)。 東山キューブの中に数多の作品が詰め込まれ、さらに各作品同志が剥き出しで隣り合っていたりしますから、見ようによってはまさに瓦礫の山とも感じられま…

ストゥールゴールズ ショスタコーヴィチ交響曲第11番

Shostakovich 1905 -Sacd- アーティスト:BBC Philharmonic 発売日: 2020/04/17 メディア: CD ドミトリー・ショスタコーヴィチ: 交響曲第11番 ト短調 作品103 「1905年」 BBCフィルハーモニック指揮: ヨン・ストゥールゴールズ (Chandos CHSA5278 2020年リリ…

京都国立博物館の「日本書紀」(岩崎本と吉田本) 

日本書紀成立1300年記念 特集展示 国宝「日本書紀」と東アジアの古典籍 ■2021年2月4日〜28日■京都国立博物館 720(養老4)年に編纂されたとされる日本書紀。 昨年2020(令和2)年はこの文書成立から1300年の記念イヤーだったことになります。京博は日本書紀の写…

「天の中庭」の清水九兵衞

京都市京セラ美術館の南回廊1階は、主に、館蔵品の中から選ばれた作品を「コレクション展」として季節毎に披露するエリア。 企画展の開催を中心とした北回廊とほぼ相似形をなして向き合っています。 北回廊の中庭は「光の広間」と名付けられガラスの天井が張…

石黒宗麿が「砕いた」陶片|京都国立近代美術館

エデュケーショナル・スタディズ02:中村裕太 ツボ_ノ_ナカ_ハ_ナンダロナ? ■2020年12月24日〜2021年3月7日■京都国立近代美術館 食器などの陶器は日常生活の中に溶け込みすぎていて、意識的にとらえない限り、空気と同じような存在です。 しかし、突然その…

清水卯一「青瓷大鉢」

京都国立近代美術館で開催されている「2020年度第4回コレクション展」(2021年3月7日まで)。清水卯一の「青瓷大鉢」が展示されています。 1973(昭和48)年の製作。 第2回日本陶芸展に出品された後、翌1974(昭和49)年度、早速に京都国立近代美術館が買い上げた…

木子清敬・伊東忠太・佐々木岩次郎 平安神宮

平安神宮神門の入口西側に、京都市が立てたこの神社の由緒書があります。 以下に抜粋引用してみます。"平安京奠都の延暦十三年(794)より千百年にあたる明治二十八年(1895)、桓武天皇を祭神として創建された。紀元二千六百年にあたる昭和十五年(1940)には、平…

慶野ことり「割れ野のはな」

創立75周年を記念して2月7日まで京都文化博物館で開催されていた「京都工芸美術作家協会展」。 大家から中堅若手まで実に幅広い作品が展示され、見応えのある記念展でした。 慶野ことりは工芸美術創工会に所属する陶芸家。 詳しい来歴はわかりませんが、1996…