大丸温泉旅館 (栃木県・那須温泉郷)

 

 

比喩でも誇張でもなく、温泉が川になって流れています。

那須温泉郷の最奥に位置しますが、設備等は秘湯すぎることがなく整えられた民芸調で統一。アクセスも意外と良いのでリピートしてきた宿です。通算すると4,5回、投宿しているでしょうか。

 

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以前は那須塩原駅から、那須地域の温泉組合が手配した無料の宿泊客専用送迎バスが運行されていました。ご時勢なのか、今は関東バス運行の路線バスとの提携にシフト。宿泊客は事前に宿へ申し出ておけば無料で関東バスが宿至近のバス停まで運んでくれる仕組み。

専用バス時代はほぼ1時間以内に大丸温泉まで到達していましたが、路線バスシフト後は1時間20分くらいかかります。大丸温泉のバス停には予め宿の送迎車が待機。さほどバス停から宿まで距離はないのですが、丁寧にアテンドしてくれます。

 

14時からチェックインできます。ただし外来入浴を11:30から15:00まで受け入れているので、15時前に浴室に行くと日帰り客とバッティングします。無人の大露天、その一番風呂を独占というわけにはなかなかいきません。

昔といろいろ比べてしまうのは好きではありませんが、どうしても馴染めないこの宿の路線変更点が「ゆあみ着」の着用義務化。

宿の名物は湯の川が堰き止められた混浴露天。ここに入るには男性はハーフパンツ、女性は胸元から隠れるポリエステル製のゆあみ着なるものを着用しなければならなくなりました(日帰り客用にはグリーンの大きなバスタオルが提供され、それを巻きつけて入浴。そちらの方がまだ良さそうではあります)。

義務化は時代の流れに沿ったものなのでしょうが、湯浴みしている最中、妙に「ゆあみ着」がまとわりついてくる感じ。せっかくの開放感に水を差されるような触感が残ってしまいます。

 

とはいえ、文字通り温泉川に浸れるこの大露天の素晴らしさはやはり類例をみないものです。もっと大規模なものでは北海道カムイワッカの湯滝や紀州川湯温泉、美作湯原温泉大露天のような例がありますが、一つの宿で温泉の川を独占している大丸温泉は奇跡のような存在。

二種の源泉が混合されています。

川の湯源泉は36.8度、pH7.5、桜の湯源泉は77.9度、pH7.3。どちらも温泉分析表上の分類では単純温泉。二つの源泉の温度差を利用して適温化が図られています。無色透明ですがほんのりと微かに温泉特有の香りが感じられます。

 

「白樺の湯」と名付けられた最大の露天は上流から二つの小さな露天を経由して下ってきた温泉流が堰き止められて成立していますが、この大露天自体、小石が敷き詰められた底から高温の湯が湧き出している足元直下型。別の湯口からも高温泉が加えられ、温度が下がった温泉川と混じり合って適温化されます。昔はなかった打たせ湯が豪快に落下。とにかくその湯量に圧倒されます。

上流側二つの混浴露天の内、特に最上流に造られた「あざみの湯」は湯川の流れにそのまま身を委ねることができる特級風呂。温めなので長湯も可能。ただし1月から3月くらいまでの冬期は閉鎖されてしまうので、要注意です。

 

内風呂も趣があり、こちらは当然に「ゆあみ着」をつけなくても良いので助かります。上がり湯的な使い方をしています。

さらに素晴らしい浴室が貸切風呂「相の湯」。小さな旅館ならこれを「大浴場」としてもおかしくないような広さ。ザーザーと轟音をたてて湯口から掛け流される温泉量の凄まじさ。浴槽の縁からどんどん湯があふれます。実はこの宿で一番温泉鮮度の高い浴槽かもしれません。予約は必要なく空いていればいつでも入れます。

 

夕食・朝食とも専用の食事処に案内されます。山奥の秘湯宿としては手堅くまとめられていて価格に見合うレベルではあるものの、味はやや平板で、食事が楽しみな宿、というレベルではありません。トマト鍋のしゃぶしゃぶ等、新しいアイデアを盛り込んではいますが、そういう工夫よりシンプルに肉の質をあげて欲しいとも感じます。秀逸なのは朝のお粥で、塩味がほんのりと効いていて、これはしみじみ美味しい。白米ご飯とは別に必ず食べることにしています。

 

那須の透明湯系では大丸温泉旅館以外の宿も、結局ここの源泉を引湯しているところが多いようです。せっかくなら源泉湧出地であるこの宿にということになるので、ここ数年、那須では大丸温泉のみに宿泊しています。

もちろん他に湯本・鹿の湯系の白濁硫黄泉もありますが、私には強烈すぎるので敬遠気味。超秘湯の「北温泉」は徒歩アクセスが冒険的ゆえ躊躇したまま未経験です。ただ大丸も「ゆあみ着」が苦手になってしまったので、今後は貸切風呂中心に狙い、新コロ騒ぎやダサく歪んだGOTO政策がすっかり収まった後、オフシーズンにこっそり再訪してみようかと。でも、たぷん、それは相当、先のことになりそうです。

 

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