「国立工芸館」移転直前のお別れ展示

 

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東京国立近代美術館工芸館が「国立工芸館」(通称)として金沢に移転します。

 

今年10月25日に開館の予定。

移転後も正式には「東京国立近代美術館工芸館」の名は維持するようなので、「旧」という言い方はできないわけですが、北の丸公園のレンガ建築と一緒に親しんできた身からすると、金沢のそれはもう完全に別の美術館。

 

今後は通称の「国立工芸館」が一般化するのでしょう。

 


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竹橋の本館で開催されている今期(6月16日〜10月25日)のMOMATコレクションでは、この工芸館移転を記念したコーナーが設営され、熊倉順吉等の名品を、ほんの一部ですが、まだ東京で観ることができます。

 

田口善国のミミズク柄が印象的な「日蝕蒔絵飾箱」、越智健三の鋭角曲線美が堪能できる「黒い花器」、柳原睦夫のメタリックにエロい「紺釉金銀彩花瓶」といったおなじみの傑作がまだ竹橋にありました。

なお移転後の「国立工芸館」では、漆工の松田権六が金沢生まれでもあることから特別扱いを受けていて、彼の東京での仕事場を移築し常設展示されるとのことです。

 

さて邦人作家に囲まれて、一際、群を抜いて格調高いスタティックな美を醸している逸品も何気なく置かれています。

 

ハンス・コパーの「スペード・フォーム」。

海外作家については、移転後、バナード・リーチはもう十分なので、この人やルーシー・リーのコレクションを充実させて欲しいと思います。

 


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今年、早春の頃まで東京で運営されていたこの工芸館が最後に企画した展覧会が「パッション2020」。

同館所蔵の名品を選りすぐっての展示が繰り広げられていました。

 

小名木陽一の「赤い手袋」が写された館内ポスターに「さらば。」とメッセージが掲示されていて、とても寂しい気分になったことを覚えています。

ただこの時期の閉館企画は、その後のコロナ騒動を考えると、全くの偶然ですが、タイミングが良かったと言えるのかもしれません。

 

北の丸公園では旧近衛師団司令部庁舎が使われてきました。

確かに手狭ではありましたが軍事施設とは思えない洗練されたクラシカルな雰囲気が好きでしばしば訪問していました。

 

金沢では同様の明治期洋風建築である旧陸軍第九師団司令部庁舎と同旧金沢偕行社が移築されて使用されるとのこと。

北の丸の雰囲気をできるだけ継承しようとみられる移転プロジェクトです。

 

金沢での工芸館がどのような運営展開を見せるのか楽しみではありますが、竹橋の本館にも少しはコレクションの一部を常時入れ替え展示してもらいたいものです。

 

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東京国立近代美術館工芸館内部