「敦煌写経と永樂陶磁」展 (三井記念美術館)

 

 

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三井記念美術館コレクション「敦煌写経と永樂陶磁」

 ■2020年9月12日〜11月8日

 ■三井記念美術館

 

本来の予定では飛鳥・奈良時代仏教美術に関する特別展を予定していたそうです。ところがコロナの影響で取りやめ。代わりにこの美術館単独の所蔵品による当企画展を決行。

私設美術館ですから無理をして代替展を開催しなくても良いように思えますが、維持管理面の問題や、運営スタッフを長期間休ませておくわけにもいかないのでしょう。

 

しかし、代替とはいえ、自前のコレクションのみで、質の高い展覧会を組めてしまうところが、三井コレクションの底力。

実質的にはかつて催された写経と京焼、二つの展覧会を組み合わせた急場しのぎの地味な企画といえなくもありません。それでも、充実した作品が揃った見応えのある内容で楽しめました。

このご時世ですから、集客力のある人気作、国宝重文の展示はあえて避けたようでもあり、実際、平日の午後、入館者は数えるほど。

 

メインは1900年に敦煌蔵経窟から発見された、主として唐代7〜8世紀頃作成の写経の数々。3つの展示室を広々と使って大乗教典の名品が次々と披露されています。

いずれも初めて観るものばかりでしたが、1000年以上、土埃にまみれた敦煌で眠っていたとは思えない生々しい筆致が残っていて驚きます。

中でも長安宮廷写経といわれる巻は小さい文字の一つ一つに高い品位と威勢が同居。格調高いリズムが写経全体から伝わってきました。

 

これらの写経はいずれも敦煌の奥深く、土壁で塗り込めらた蔵経窟に格納されていたそうです。つまり、実際に読むことや見せることを目的としたものではなく、純粋に仏に捧げる意図で写された教典と推測されます。

書かれた漢字の一文字一文字自体が当時の信仰を直接表現しているともうけとれるわけで、美しい料紙に書かれた日本の写経芸術とは違った迫真性があります。ストレートに漢字そのもののもつ生命力、美しさを堪能できました。

 

展覧会の前半は永楽保全による京焼の特集。メインの写経に合わせて中国に題材をとった陶器を中心に優品がたっぷりと紹介されています。

いずれもデザイン性に優れ、19世紀京焼の洗練された造形と色彩の美が表出されています。

三井家は保全最大のパトロンで、同家慶賀の機会に合わせて特注された豪華な器も見られます。しかし、これみよがしに華麗さを大柄に表現するのではなく、小ささ、薄さに拘っているあたりが江戸時代後期の美意識を感じさせます。

特に惹かれたのは、金と黒で仕上げられた「瑠璃釉金彩若松文食籠」。モダンとも言える逸品。カラフルな作品群の中で一際、気品を漂わせていました。

この美術館の常設コーナーである「如庵」を再現したレプリカ茶室でも保全の作品が今回展示されています。同じ作家の器ながら、色彩を抑えた茶碗が置かれています。江戸の初期に建てられたこの茶室には、化政度の洗練より、質朴さが似合うようです。

 

10月初旬現在、三井記念美術館は事前予約なしに入館できます。しかし、1階のエントランスでスタッフが待機。コロナ対策として名前(苗字のみ)と連絡先を教えるように促されました。任意とのこと。入館者や関係者の感染が確認されたら連絡してくれるということでしょう。

ただ、もはやこのような対応はあまり意味がないのではないかと感じます。中途半端な対コロナセレモニーはいかにも無駄です。おそらく聞く立場の運営スタッフ側もうんざりしているのではないでしょうか。別の方法をとられた方が良いと思いました。