「後藤克芳 ニューヨークだより」展 (渋谷区立松濤美術館)

 

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後藤克芳 ニューヨークだより "一瞬一瞬をアートする"

 ■2020年10月3日〜11月23日

 ■渋谷区立松濤美術館

 

ゴトウ カツヨシ。名前を聞いたことがないアーティスト。
でも松濤美術館が特集するのだから何かがあるのだろうと、散歩をかねて出かけてみました。
結果は、見応え十分。楽しめました。

当初は8月から9月にかけて予定されていた企画展。コロナの関係で延期になったようです。
しかしあの酷暑下、だらだらと松濤の坂を登るのはきつく、会期が後ろ倒しになってくれたおかげで観ることができたようなもの。コロナ禍福現象。

後藤(本名加藤)克芳は1936年米沢生まれ。2000年にニューヨークで没した人。永住権を取得し、半生をNYで過ごした芸術家。

米沢市上杉博物館が大量のコレクションを有していて、今回松濤で展示されている作品も大半が同館から借り受けたものです。この博物館は現在東博で開催されている「桃山」展に家宝とも言える上杉本洛中洛外図屏風を貸し出し中でもあり、偶然とはいえ東京に秘蔵品を大展開してくれていることになります。


後藤の武蔵美で学んだ画力はとてもハイレベルで、若い頃の作品にその技術の確かさがすでに現れています。
72年、渡米直後の"UMBRELLA"や、特に演劇雑誌『キュー』とハイヒールを描いた無題の油彩にみられる写実性はハイパーリアリズムの域。

しかし後藤の方向はすぐに絵画から離れ、専ら木に遊びつつ立体造形で独自の世界を開拓していきます。
ポップ性が際立つ作品が多いのですが、絵画にみられた技巧へのこだわりが継続して発揮されているところがこの人の個性。
素材は木なのに、アクリル絵具や油彩を駆使して、例えば本物の金属のような質感を実現。立体トロンプルイユとでもいえそうな作品がみられます。

一目でウォーホルの影響がわかる作品が展示されていました。当時のNYアートシーンの中を生きた人でもあります。
邦人アーチストとの交友関係に焦点を当てたコーナーもあります。河原温の《SEP 4 1972-NOV 7 1972》が友情出演的に飾られていました。

 

後藤はNYから日本にむけて現地のカルチャーを「ニューヨークだより」として発信紹介。これが展覧会のタイトルになっています。
面白かったのは銀座ウエストの栞に文章を寄せていたことで、実物が展示されていました(字は細かすぎて読めませんでしたが)。後藤もあのシュークリームを食べたことがあるのかと想像してしまいます。


松濤美術館は10月中旬現在、事前予約は必要ありませんが、受付前に連絡先記入を求められます。
ただ、意味がわからなかったのは、受付後、観賞時の注意書が記された緑のカードを持たされたこと。
マスク必須とか当たり前のことが書かれています。観賞中ずっとこのカードを手に持っていなければなりません(帰るときに回収BOXヘ戻すルール)。静けさを守るため、いちいち監視スタッフが口頭注意しなくても良いための配慮なのでしょうが、ここまでする必要があるのか疑問です。

 

予備知識がなかったのでハズレたら白井晟一の建築美でもゆっくり眺めて帰ろうと軽い気持ちで観賞しましたが充実の内容。
2FとB1の展示室を全て使い、約50点、後藤の全貌を初めて東京で開陳しようという意欲的な企画展です。平日の午後観賞しましたが、鑑賞者は数人程度でした。
なお前期・後期(10月27日〜)で若干の作品入れ替えがあります。

 

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