細川護立の眼|永青文庫名品展から

 

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秋季展 永青文庫名品展 -没後50年"美術の殿様"細川護立コレクション-

■2020年9月12日〜11月8日

 

細川護立は終戦直後、永青文庫の隣にある和敬塾本館に居住していたそうですが、これを米軍に接収されたため、現在の肥後細川公園内にある松聲閣に一旦、移住。

しかしその後、細川家の家政所だったこの文庫に移ります。

結局ここが終の住処になりました。

こんな経緯の解説を含め、没後50年の記念展が開催されています。

今回の展覧会では2階展示室を使って護立ゆかりの写真や品々がたくさん紹介されています。

大河ドラマに因んだ細川家と明智光秀の関係などを説明したパネル展示もありますが、これは直接関係がないので余計な印象ではあります。

 

新しく重要文化財に指定された松岡映丘の「室君」と平福百穂の「豫譲」は前期(9/12〜10/11)で展示終了。

今回は見逃しました。

しかし代わりに後期は菱田春草の「落葉」が展示されています。

なおお馴染みの「黒き猫」は全会期展示されていますので、見逃す心配はありません。

「落葉」は、例えば東博等の大規模美術館に出張するとフラットに近いくらい広げられて展示されることが多いように記憶しています。

永青文庫は狭いのでしっかり六曲一双、本来の形で飾られています。

フラット展示も良いのですが、折り曲げられると春草の仕掛けた遠近感がより一層感得されるように思います。

「猫」より「落葉」です。

 

4階展示室ではまず白隠に敬意を払った後、護立が支援した近代日本画の巨匠たちが特集されています。

中でも後期は特に横山大観に焦点があてらていて、小林古径安田靫彦梅原龍三郎など錚々たる画家が描いた大観の肖像画が展示されています。

三幅対の「観音猿鶴」は大観、下村観山、竹内栖鳳が共演した作ですが、技術的には栖鳳、観山、大観の順ではっきり差がわかってしまう残酷な展示でもあります。

しかし、大観の「旭光照波」等は抽象デザインを思わせる傑作で、古さを感じさせません。大観という画家の「幅」が感じられます。

3階は護立コレクションを成り立たせている各要素、すなわち刀剣、禅画、中国美術を代表する名品が展示されています。

中でも唐三彩に惹かれました。

このジャンルはあまり好きではないのですが、今回展示されている3点はいずれも古雅の美が備わっていて見入ってしまいました。

「猫」がいるせいなのか、平日の午後、いつもよりは多めの鑑賞者数。

でも密状態には程遠く快適に観賞できました。

事前予約は不要。

入り口で体温チェックがあります。

コロナ対策のため2階の一部が閉鎖されています。

座り心地の良い大きなソファも利用禁止。

ちょっと残念でしたが、疲れたら肥後細川公園のベンチでゆっくりできます。

 

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