龍朋のトマトたまご麺

 

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神楽坂駅矢来町口の龍朋(りゅうほう)といえばチャーハンで、店内を見渡すと8割くらいのお客さんがこれを食べていたりします。

しかしこの店は本来、ラーメン屋(看板は"The Lamen")。メニューの8割近くは麺類で占められています。

味は大きく分けて二系統。醤油系の茶色いスープと塩系の白いスープ。どちらも澄んではいません。どよんと濁っていて、何かが混ざっている感じ。特に醤油系は、貫禄ある店の内装と同じく、歴史の澱を混ぜ込んだような色合いです。

塩系では塩ラーメン。シンプル。飲んだ後には特にぴったり。店名を冠した「りゅうほう麺」もこの系統。野菜がたっぷりのったいわゆるタンメンですが、塩スープの直接的な旨さを味わうのであれば塩ラーメンが一番だと思います。

醤油系といっても、澄んでくっきりとした味わいが特徴のいわゆる昔ながらの東京ラーメンとは違います。どこかとろんとした舌触りが残る。もっさり感とも違う。なんというか、長年使い込まれた道具がその姿に表す深みをたたえた艶のような味わいがあります。一朝一夕には出ない味です。
この醤油系の汁をダイレクトに味わうには、実はラーメンではなくチャーハンについてくるスープが一番だと思います。麺の水分で薄められていないスープそのものの旨味が凝縮されています。

では、結局、チャーハンではないか、ということになり、それもそうなのですが、醤油系でもこのスープをたっぷり堪能できる麺があります。


一つは「もやしそば」。同じ系統に「広東麺」がメニューにありますが、こちらは餡が主張するのでスープの味わいがちょっと後退します。もやしそばはさほどとろみが付けられていない。たっぷりとしたもやしがスープと絡まってシンプルに美味しい。

もう一つは、異色すぎるのか、あまり頼んでいる人を見かけたことがない「トマトたまご麺」。先日注文したら店内から「えっ?」という視線を感じたほど。
しかしこちらも龍朋の醤油系スープの旨味をたっぷり楽しめる麺なのです。
まずトマト。豪快に生のトマトが一口大にカットされ、そのまま投入されています。ほとんど熱が加えられていないレベルですが、その分フレッシュさが残っていてスープの濃厚さとちょうど釣り合う食感。
そして、溶き玉子。フワフワ感よりボリューム感。スープと一体化すると独特の旨味を合成。この店でしか楽しめない味です。
トマト、たまご、中華とくるとチリ味を連想させますが、その気配は一切ありません。妙な辛味もないので安心して食べられます。770円。チャーハンと同じ値段です。


コロナ影響からの立ち直りは早く、昼時は行列。夜も結構並んでいます。でもこの店は通し営業なので、平日16時すぎあたりからの夕方にいくと行列はまったく無く、店内の客もまばら。

ドタバタとチャーハンをかきこまざるをえない昼間のピークは避けて、黄昏時、文字通り正真正銘下り坂の途中に建てられた龍朋でトマトたまご麺をまったり味わう。La Kaguとは正反対の楽しみが待っている矢来町口です。

 

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龍朋店内から朧の坂をのぞむ