京都市京セラ美術館の開館記念展

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京都市京セラ美術館開館記念展 京都の美術250年の夢
第1部〜第3部 総集編 江戸から現代へ

■2020年10月10日〜12月6日

 

当初、3部シリーズの構成で、それぞれ会期を分けて今年の春から順次開催される予定だった展覧会です。

コロナの影響で第1部が中止となったことから、思い切って3部を合体。

秋の1回展示に仕立てあげなおすことになったそうです。

3回分を1つにまとめるため、本来展示される予定だった作品を削り再構成。

そのため「総集編」と題されています。

 

ただ、この表現はかなり紛らわしいのではないでしょうか。

各回を実施した後にハイライトをあらためて展示するというなら理解できますが、いきなり「総集編」。

事情を知らないと、何が「総集」されているのか、意味がわかりません。

それはともかく、内容はこの美術館の大規模リニューアル記念に相応しい質と量を誇っています。

むしろ一回にまとまったおかげで、タイトル通り、250年の京都美術を一気に展観できてしまう。

見応え十分の企画だと思います。

 新しくなった京都市美術館の北回廊、つまり半分が展示会場になっています。

それでも広大なスペースであり、じっくり観賞するなら2時間は必要かと思います。

 

第1部では江戸時代の名品絵画をまず繰り出して一気に豪華な気分を盛りあげます。

応挙に蕪村、若冲(後期には蕭白と芦雪も登場)。

中でも呉春の「白梅図屏風」(逸翁美術館)が相変わらず素晴らしい存在感。
ただし、これは前期(〜11/8)の展示です。


第3部の戦後から現代までを扱った展示もたいへんハイグレードなのですが、なんといっても見所は第2部でしょう。

京都画壇に天才たちが競った大正期を中心とした時代を扱っています。

 

苔寺西方寺が所有している入江波光の「降魔」は、和風「聖アントニウスの誘惑」。

釈迦にまとわりつく魔物の姿は不気味に崩れておどろおどろしく、従来の日本画の枠を大きくはみ出しています。

小野竹喬の大作「海島」が笠岡市立竹喬美術館から出張。

竹喬は小さい画面の絵もとても美しいのですが、この作品では二曲一双、堂々の屏風絵。

開館記念に華を添える雰囲気があります。

土田麦僊も当然に登場していますが、今回、特に感銘を受けた作品が、宮内庁三の丸尚蔵館から出展されている「罌粟」。

麦僊の人物描写はいくらなんでも形式化がすぎてあまり好きではないのですが、芥子の花を描いただけのこの作品では人物がいない分、徹底したデザイン化と写実が融合していて、無駄のない優美さが感じられます。

再構成したといっても、とても全ての作品を通期で取り上げることはできなかったようで、前期と後期で大幅に作品がいれかわります。

また曾我蕭白の「群仙図屏風」は後期といっても1週間しか展示されませんから注意が必要です。

一応事前予約制ですが決済までは不要。

混雑していなければ当日窓口にいっても入場できます。

平日の午後、内容の豪華さに比べて鑑賞者数は少なく、とても快適に観賞できました。

今年は東京オリンピックを意識したのか、いくつか有名美術館がリニューアルを行いました。

その中でもコロナ禍で最も激しく出鼻を挫かれたのがここ、京都市京セラ美術館かもしれません。

このリトライ企画もたいへんな調整が必要だったと思われます。

しかし、今回の内容は繰り返しますが非常に充実したもので、リニューアル第1回の主催展として十分成功しているとみて良いのではないでしょうか。

 

鑑賞者として感謝しています。

 

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さて、図録は「総集編」が間に合わず、各部単位の3冊分売。

3冊まとめて会場で買うとロゴ入りトートバックがついてきます。

リニューアル開館のご祝儀と勝手に自分を説得してセットを気前よく買ってしまいました。

大散財となりました。