コスパ、という言葉はあまり好きではないのですが、この店で食事した後はどこで食べてもコスパが悪い、と思えてしまう。
安定した味に大満足のボリューム感。
なのに価格は驚くほど良心的。
日常フレンチの愉悦があります。
ブラッスリー・グー(Brasserie Gus)がある場所は一応神楽坂界隈ということになりますが、飯田橋寄りのいわゆる神楽坂メインエリアからはかなり離れています。
神楽坂駅矢来町方面口から出て牛込中央通り沿いにLa Kaguと新潮社を通り越して5分くらい。
牛込神楽坂駅からも徒歩圏内です。
意外と栄枯盛衰が激しい神楽坂・牛込フレンチの中ではもはや古株の店と言えるでしょう。
プリフィクスのみ。
ランチは1200円と2600円の2パターン(2020年現在)。
人気は1200円のセットです。
一通り、全部食べたことがあります。
前菜は、次から選びます。
お肉のテリーヌ、鶏レバーのパテ、鴨のリエット、豚のゼリー寄せラヴィゴットソース、パルマ産生ハムと小海老のサラダ、ノルウェー産サーモンマリネ、オニオンのキッシュ。
主菜は以下から。
本日の魚料理、若鶏のロースト香草バターソース、仔羊の煮込み、豚パラ肉の赤ワインビネガー煮込み。
前菜は何を頼んでもたっぷりと新鮮なサラダが盛られています。
その上にそれぞれ冷菜料理がのるわけですが、どれもこれもボリューミー。
上品な前菜というよりこれはこれで一皿のしっかりした料理の体裁がとられています。
特にお肉のテリーヌ。
手のひら大で分厚い。
しかも味は濃厚。
プラスアルファでフォアグラのテリーヌにもできますが、充分、普通の肉テリーヌも美味しい。
鶏レバーのパテは大きなスプーンでざっくりすくった感じ。
パンによく合います。
鴨のリエットは円形。
リエットというと小さい器に詰め込まれている体裁が多いのですが、この店はドンと大きなハンバーグくらいの大きさ。
こちらはパンにつけるというより単体でしっかり食べることになります。
豚のゼリー寄せも丸く整えられていて、白いラヴィゴットソースがアクセント。
見た目のお洒落感ではこれが一番でしょう。
生ハムサラダやサーモンマリネはどちらかというと普通の一皿ですが、それでもベローンと広げられたハムや切り身の存在感はなかなかのもの。
あまり腹に余裕がない時、軽く仕上げるならこの二皿がおすすめです。
前菜の中で唯一温かい料理がオニオンのキッシュ。
ほんのりとした甘みが楽しめます。
ということで前菜は何を食べても美味しいのですが、あえて、この店らしさという点からいうと「お肉のテリーヌ」でしょうか。
メニューの一番上に書かれています。
主菜では仔羊と豚バラの両煮込み料理。
前菜に劣らずボリューム感がすごい。
特に豚バラは、拳くらいの大きな塊がドカンと鎮座。
圧倒されます。
しかし、どちらも柔らかく煮込まれているので、不思議とすんなりお腹におさまってしまう。
主菜のおすすめとしては鶏ローストでしょうか。
これもかなりの量ですが、ソースの甘みがやや勝った煮込みに比べると塩がとてもよく効いていて酒にもあいます。
昼間から飲める人にはちょうど良いと思われます。
ただ塩辛さが苦手な人は避けた方が良いかも。
主菜にはどれもたっぷりとマッシュポテトや温野菜が添えらていて、さらに満腹感を助長してくれます。
この店でやや不満なのは魚料理です。
これも十分美味しいのですが、バリエーションがいかにも乏しい。
以上の定番メニューに加えて店内の黒板にパプリカのムースやインサイドステーキ(追加料金あり)などが書かれています。
黒板メニューの名物はトリッパ(追加料金なし)。
これも酒飲みにはたまらないのですがやや辛味が効いているので昼飯に選ぶと汗をかくことになるかもしれません。
デザートやコーヒーは別料金。
グラスワインは赤白共に550円。その他飲み物はいろいろあります。
テキパキした店内スタッフの皆さんにも関心します。
無駄がありません。
パンもどんどん追加されるので、午後から仕事がしたくなくなるくらいお腹がふくれます。
昼間は予約しておいた方がベター。
特に土曜日は早めに予約しないと満席必至(日曜は定休)。
地味な場所にあるのに平日でもひっきりなしにお客さんが入ってきます。
10月現在、コロナ影響はほとんどなく盛況です。
夜は早い時間なら平日、かなり余裕があります。
3300円のコースのみ。これも大変なお値打ち価格。
グルーブでもカップルでも一人でも。
それぞれに楽しめる店なので重宝します。
例えば価格帯がそもそも違いますが、近所のル・マンジュ・トゥーのような繊細さを求めると完全に裏切られます。
いわば「わかりやすい味」。
そこが評価の分かれ目でしょう。
しかし、何しろこの気安く満足が得られるところがかけがえのないこの店の価値だと思います。