コレクションルーム 秋期
■2020年9月26日〜11月29日
■京都市京セラ美術館 本館南回廊1階
リニューアルされた京都市美術館では年に4回、コレクションルーム展と題して、いわゆる常設展を開催しています。
秋期展はまさに「秋」そのものをテーマとしていくつかのコーナーを設定。
主に京都ゆかりの画家、工芸家の作品で構成されています。
南回廊の1階部分のみを使用していますから、2階まで使っている北回廊の企画展に比べると規模は小さい。
それでも100点を超える作品がたっぷり紹介されています。
じっくり余裕をもって観賞するためには1時間程度みておいた方が良いと思われます。
いくつか印象に残った作品について。
「秋の風景1」のコーナーではまず、山口華楊晩年期の傑作「鶏頭の庭」。
1977年の製作。
深みのある緑の背景にさらに陰影を込めた鶏頭が直立しています。
明るい色調が多い華楊の絵にしてはどことなくダークな雰囲気が漂う。
鶏頭という花の、単純に美しいだけではない、異様に神秘的な存在感を抽出。
木島桜谷の「薄」は六曲一双の金地屏風。
琳派を思わせるような様式化された薄と月が洗練の極致を示しています。
「宇治川之巻 ー 伏見」は冨田溪仙による巻子。
ざっくりとした筆使いで水車や川縁の家々をリズミカルに描いた洒脱さに魅了されました。
竹内栖鳳の作品を大量に有しているこの美術館。
彼専用のコーナーを設けて紹介しています。
重文に指定された「絵になる最初」の展示はすでに終了していましたが、未完の大作「渓流」など、明治から昭和まで活躍した栖鳳の作品をまとめて観賞することができます。
「秋の風景2」では須田国太郎の保国寺(愛媛)の習作。
乱雑に見える石組の様子を、抽象絵画一歩手前まで迫りながら形象の本質を掴み取ろうとしている画家の視線。
ひときわ存在感を放っています。
「工芸にみる秋」も充実。
番浦省吾の名品「草花図形漆衝立」。
アールデコをすでに消化した後の吹っ切れたかのような様式美。
六代清水六兵衛の花瓶は彼独特のスマートな器の形状に、まるで酒井抱一の夏秋草図屏風から写し取られたかのような銀の世界が描きこまれています。
森口華弘による菊花文の友禅は1978年の作
。面白いのは息子邦彦の幾何学文様になんとなくこの着物は似ているということ。もちろん邦彦の数学的美学の世界とは根本的なところで違うのですが、伝統的な菊花様というより、かなり抽象性が取り入れられたデザイン。
その超絶技巧ぶりには目を見張ります。
その他、八木一艸の青磁、甲斐庄楠音「青衣の女」、北脇昇「流行現象構造」など優品が多数展示されています。
この美術館のユニークな特色である近現代アートコレクションもちゃんと織り交ぜられていますが今回はやや大人しい印象。
さて、びっくりしたのはその閑散ぶり。
またコロナが再燃しているからかもしれませんが、平日の昼過ぎ、ほとんど無人に近い状態。
監視スタッフのみなさんの数が鑑賞者より多いという気の毒な状況でした。
観賞コンディションとしては最高だったのですが...
次回の冬期もとても楽しみ。
企画展も重要ですが、リニューアル後の真価はむしろコレクションルームの運営にかかっているようにも思えます。