「工の芸術」展 (国立工芸館)

 

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国立工芸館石川移転開館記念展I 工の芸術 素材・わざ・風土

 ■2020年10月25日〜2021年1月11日
 ■東京国立近代美術館工芸館(国立工芸館)

 

板谷波山にはじまり板谷波山に終わる。
金沢に移転したMOMATの工芸館、最初の記念展。まずはクラシカルな日本近代工芸を紹介する穏当な企画でスタートしたようです。
はじめて訪れてみました。

 

ロケーションは最高です。
竹橋にあった頃、工芸館は北の丸公園、旧近衛師団司令部の建物を使用。風格がありました。
金沢では兼六園横の高台に広々とした前庭を確保。隣の石川県立美術館や、いしかわレンガミュージアムと共に一種のアートフォーラムを形成。
12月初旬だというのにまだ名残の紅葉が美しく周囲を彩っていて、明治古典様式を伝える旧日本陸軍施設の建物が映えています。
竹橋の工芸館がとても好きでしたから、金沢移転は本当に残念だったのですが、この立地なら納得です。

金沢駅からバスで10分くらい。バス停からは急な広坂を登るか、工芸館裏手の「美術の小径」からこちらもかなり急な階段道を上がる必要があります。石川県立美術館に行ったことがある人なら、隣ですから、アクセスのイメージはできると思います。
いずれのルートもとても美しいアプローチが楽しめます。

ちょっと注意が必要なのはロッカー。
工芸館メインエントランスとは離れた別の場所にあります。知らないでそのまま受付を済ませて入館しまうと一旦、また外に出る必要があり面倒です。

 

さて、今年はサントリー美術館、アーティゾン美術館、京都市京セラ美術館等、リニューアルをしたメジャーなミュージアムが目立ち、渾身の記念展を開催してきました。
国立工芸館(これは通称で、正式には東京国立近代美術館工芸館のままです)はどんな展示で移転後のリニューアル展にのぞんだのか。

 

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新しい場所、金沢でリスタートするあたって、この日本屈指の工芸の街に敬意を表しています。
陶芸、漆工、木工、竹工、金工、染織、人形とあらゆるジャンルから選び抜かれた逸品が取り揃えられ、どれも「わざ」の凄みを感じさせるものばかり。
展示スペースの規模としては竹橋に比べさほど大きくなったとは思えません。でも白を基調とした室内は明るくとても見やすい。

板谷波山は金沢の人というわけではありませんが、石川県工業学校で教鞭をふるった縁でこの記念展の冒頭と最後に飾れています。この人の陶芸の技は誰がみても文句なしで、何より気品があります。金沢への挨拶として相応しい選定。

当然に金沢出身の巨匠松田権六は特級の扱い。
彼の漆芸で使われた仕事場が丸ごと再現されています。これは常設展示。
手にした道具にまで現れた細やかさ。
ただ再現された仕事場は周囲を囲んだガラスが反射して見えにくいところが難点。照明をもっと工夫する必要があるかもと思いました。

工芸館のコレクションにはかなり奇抜なもの、例えば竹橋での最終展を飾った小名木陽一の赤い手袋のオブジェや、走泥社のメンバーたちによる尖った作品が含まれていて、こちらの人気も高い。
でも、今回の第1回記念展では前衛的な作品はほとんどとり上げられていません。

まずは格調高く、日本工芸が持つ伝統美を紹介しようという企図が感じられました。

昔ながらの大家だけではなく若手の作品にも目を配ってはいます。「芽の部屋」と題されたコーナーでは見附正康他、気鋭の工芸家たちを紹介。ただ、今回は企画展全体の雰囲気にあわせたのか、やや優等生的な作品が集めらていたようです。

 

記念展は続編があるようなので、今後はもっとスパイスの効いた作品の陳列が開始されると期待しています。
何しろ近くには金沢21世紀美術館があって大賑わいなのですから、東京にあった頃よりも先鋭的な作品を大展開し、あちらに拮抗するような企画があっても良いと思います。

 

ミュージアムショップでクレジットカードが使えない等、まだこなれていないところが散見されましたが、これから改善されていくのでしょう。
次回の企画展はルーシー・リー等がとりあげらるそうなので、楽しみにしています。

 

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