京都市京セラ美術館 冬コレ2020-21

 

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コレクションルーム 冬期

 ■2020年12月3日〜2021年3月14日
 ■京都市京セラ美術館 本館南回廊1階

 

京都市美術館が所蔵品を季節に合わせて順次展開していくコレクション展。
リニューアル後、春期から一巡、冬期の展示がはじまっています。

 

近年再評価が著しい木島桜谷の傑作「寒月」が置かれた最初の展示室は「冬に生きる」と題されています。

壁一面を贅沢に使って展示された「寒月」。
あらためて感銘を受けました。
これはもう重要文化財に指定しても良いくらいの傑作ではないかと勝手に評価しています。
夏目漱石がこの作品を酷評したことは有名なエピソード。
漱石は自らも筆をとるほどに南画を好んでいました。
彼が幼少期から慣れ親しみ大切にしてきた部屋を飾る美は文人画の世界。
だから「寒月」をはじめて屏風絵として見たとき、ぞくっとするくらいリアルな情景が描かれたこの作品に反射神経のレベルで拒絶反応をみせたのではないか。
屏風絵としてではなく、純粋に絵画芸術として評価する機会があったなら、漱石は別の感想を持った可能性もあるかもしれないと想像しています。

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同じ部屋に展示されている山口華楊の「霽」。
9羽のカラスが真っ白な雪景色の中に描かれています。
カラスたちの配置が生み出す黒と白のリズミカルな美。
寒々しい光景のはずが、どこか軽快さすら感じさせるのは華楊の洗練された描写力によるものでしょう。

 

続いて「冬の景1」のコーナー。
小野竹喬の作品が2点。
冬日帖」は1928(昭和5)年の作。
2枚一組の小型の絵が3セット描かれています。
冬とは思えない陽性の乾いた空気が感じられるその景色は京都ではなく、故郷岡山。
抑えた色調と細密な描画が戦前の竹喬らしい抒情性をたたえています。
他方、「夕雲」は1965(昭和40)年に描かれた茜色の空。
様式化された雲や木々が静かに存在を主張しています。
軽やかさの中に一抹の寂寥感が漂う竹喬晩期のスタイルがあらわされた一枚。

福田平八郎というと「漣」にみられる抽象化、単純化された図像の絵画が有名ですが、ここで展示されている「閑庭待春」では円山・四条派の画風を発展させたような色彩豊かな写実の美しさを大画面いっぱいに描きこんでいます。
1925(大正14)年、まだ「漣」が描かれる前の作品。
斬新な描画センスだけでなく、技巧の面でも超一級の人であったことを再認識させられました。

 

山崎隆「高原」は六曲一双の大画面すべてを使って大地と空だけが描かれています。
その大胆な構図。
シンプルな色使いなのに高原から風圧が伝わってきそうなリアルさ。1941(昭和16)年の作品にしては現代的といっても良いくらい新鮮。

 

中間の2室では女性をテーマに作品が選ばれています。
美人画(異邦へのまなざし)」のコーナーでは主に大陸の女性たちを描いた日本画を特集。
土田麦僊の「平牀」は新古典的主義と形容したくなるほど整理された白い形式美の世界。
続く部屋のテーマは「舞妓」ですが、最も圧倒的存在感を放っているのは舞妓の絵ではなく、宇田荻邨の「太夫」。
何度観てもその妖しく退廃的な美にみいってしまいます。

 

後半では特に戦後作品に惹かれました。

「冬の景2」のコーナーに展示されている下村良之介「池畔」は「かたち」として分解された白鷺の姿がピンクとブルーの二色を背景に描かれています。
1957(昭和32)年、第15回パンリアル展に出品されたもの。
クレーを思わせるような不思議な抒情性を感じます。

「工芸にみる冬」では番浦省吾「潮文の貌」。
漆で描かれているのにまるで金属のような質感をもった渦模様が力強く額に収められています。
1977(昭和52)年、晩年に至って用の美を離れ、純粋にかたちを追求していた姿勢が感じられます。

(二代)鈴木表朔の「漆器棚引棚」は1932(昭和12)年の作。
伝統的なたなびく雲を文様としながら極端に抽象化したデザインを採用。
これは戦前の製作ですが、懐かしさとモダンさが融合したこのインテリアは現在でも十分映える雰囲気をもっています。

 

今回もこの美術館の名品が次々と展開された充実の内容。
来年3月下旬からの二巡目の春コレクション、楽しみです。

 

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京都市美術館名品百選

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