リニューアル・オープン記念Ⅲ 美を結ぶ。美を開く。
美の交流が生んだ6つの物語
■2020年12月16日〜2021年2月28日
■サントリー美術館
収集の軸として「生活の中の美」を標榜してきたサントリー美術館。
リニューアル記念展を第1,2回と観てきましたが、今回が最もその趣旨に相応しい内容と感じます。
コレクション披露シリーズの完結編です。
第3回展でとりあげられているのは磁器や染め物、ガラス工芸といった、まさに生活の中で使われることを前提とした作品の数々。
自慢の国宝・重文を惜しみなく繰り出したを前2回に比べると地味なラインナップですが、琉球紅型からエミール・ガレまで、この美術館の多彩で奥深いコレクションを堪能できる素晴らしい企画展と感じました。
鍋島のコレクションといえば、例えば都内では、渋谷、戸栗美術館のそれが有名ですが、サントリー美術館もユニークなデザインの器を数多く所有しています。
中でも「薄瑠璃地染付花文皿」は現代の作品といわれても不思議ではない、モダンなデザイン。
青のグラデーションも美しく、レプリカがあれば買ってしまいたくなりそうな逸品。
国も技法も全く異なりますが、どことなくウェッジウッドのジャスパーを思わせるような色合いが印象的です。
さまざまなガラス工芸が展示されています。
「薩摩切子藍色被船形鉢」は19世紀、薩摩藩で製作された品。
その透明感は出来立てのガラス細工のようで、古めかしさが微塵も感じられません。
保存状態も含めて特級の工芸品です。
日本美術が中心のサントリー美術館。
しかし、ガレのコレクションも優品が揃っています。
有名な「ひとよ茸」のランプに加え、花器「蟷螂」など、完成度の高い作品が多い。
新収蔵品として「風景」と銘々された壺が、お披露目されています。
木々の間から漏れる色彩の梯子。ガレの作品として類例がなかなか思い出せないユニークな造形がみられると思います。
平日であればとてもゆったり鑑賞することができると思います。
事前予約は必要ありません。
何度もじっくり味わいたくなるような工芸展でした。