国宝「日本書紀」と東アジアの古典籍 (京都国立博物館)

f:id:karasumagaien2:20210212232645j:plain

 

日本書紀成立1300年記念 特集展示 国宝「日本書紀」と東アジアの古典籍
 ■2021年2月4日〜28日
 ■京都国立博物館

 

720(養老4)年に編纂されたとされる日本書紀。昨年2020(令和2)年はこの文書成立から1300年の記念イヤーだったことになります。

京博は日本書紀の写本を2種類収蔵。三菱岩崎家に伝わった「岩崎本」と、卜部兼片が写した「吉田本」。いずれも国宝です。
記念イヤーからはちょっと遅れましたが、現在、特別展示で「日本書紀」を回顧しています(常設展の範囲なので特別料金は必要ありません)。

岩崎本は巻22と24を写したもの。
巻22は推古天皇の代を記しています。今回の展示では聖徳太子による十七条憲法の制定が記載された部分(「皇太子親肇作憲法十七條」)、小野妹子が「大唐」つまり隋に派遣されたことを記す箇所( 「大禮小野臣妹子遣於大唐」)などが開示されていて、お馴染みの歴史的記述が目に入ってきます。

巻24は皇極天皇の代。「乙巳の変」に至る緊迫した状況を示す箇所が主に開示されています。蘇我入鹿中大兄皇子中臣鎌子などこちらも有名人の名前が鮮やかに判読でき、中大兄が長槍、鎌子が弓を持って待機したというあたりは漢文が読めなくても臨場感を伴って文字が迫ってきます(「時中大兄、卽自執長槍、隱於殿側。中臣鎌子連等、持弓矢而爲助衞」)。
岩崎本は平安時代に写されたとされていますが、品格のある筆致に加えてその明瞭さが際立つ美しい記録文書です。

他方、「吉田本」は神代。日本書紀の冒頭が記されています。
こちらは鎌倉時代の写本。欄外にメモ書のような注釈がたくさん加えられていて、岩崎本が志向している文書としての美しさよりも、吉田本はテキストとしての価値を重視して写されたように見えます。
古事記の再評価が本居宣長によってなされるはるか前の時代。日本書紀の権威は絶大だったわけで、特に「神代」にその正統性の裏付けをもつ古代からの名家にとっては、一族の存在価値をも左右する重要文書。「吉田本」は日本書紀の注釈、解釈が政治と直結していた時代の貴重な写本で、その実務的なスタイルがかえって生々しい印象を生じさせているように感じました。

いずれも1階第4展示室をまるまる使って二種の日本書紀をたっぷり展開しています。全部読み味わうのは大変ですが、所々に現れる固有名詞を追うだけでも面白い展示。

第3展示室にも古代の国宝・重文の文書が特集陳列されています。
中でも藤原公任の筆と伝わる「稿本北山抄巻第十」は当代随一の知識人、公任の不思議にスタイリッシュなクセ字を確認することができます。何が書かれているのか、判読はできないのですが...堪能はできました。

 

f:id:karasumagaien2:20210212233340j:plain