西本願寺 書院エリア

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京都市観光協会西本願寺(浄土真宗本願寺派)のタイアップによる書院エリアの特別公開が、現在、実施されています。
(2022年2月下旬から3月中旬の特定日)

 

ネットによる事前予約制。

公開日時が限られていることもあってか、今回の「京の冬の旅」企画中ではダントツの人気ぶりです。

平日なら他の寺院が予約なしでもゆったりと見学できるのに対し、西本願寺書院に関しては予約が必須だと思われます。

コロナにも関わらず、土日は既に毎回50人程度の予定人数を満たしてしまい、締め切られた枠もあります。

2月下旬現在、平日枠も残り1,2名程度となっている回が多いようです(比較的こまめにキャンセルによる空き情報は更新されている模様)。

 

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自由見学ではなく、僧侶の方によるガイドがついた団体鑑賞コースのみの設定です。

巨大な御影堂の南に接する「龍虎殿」という建物に参加受付コーナーがあり、ここで見学料2500円を支払った後、一旦、御影堂の中で待つように案内されました。

ちなみにこの料金は「京の冬の旅」企画中、最も高い設定です。

 

すぐに特別公開エリアに向かうと思いきや、御影堂で20分ほどお坊さんのお話を聞くことになりました(毎回これがセットになっているのかどうかはわかりません)。

困ったなあ、と思いつつも一応、敬意を表してお話をうかがいはしましたが、この時期、寒い堂内で20分も座っているのは辛い。

強制されるわけではないので、聞きたくない人はこっそり広い縁側で待つのもいいかもしれません。

50人が二つのグループに分けられ、やや時間差を設けて書院エリアの見学がスタートします。

なお、特別公開エリアからは写真撮影NGです。

 

一通り御影堂や周辺伽藍の説明を受けた後、やっと書院エリアに案内されました。

なお、御影堂の北につながる阿弥陀堂は現在修復工事中。

来月、2022年3月には完了する予定だそうです。

御影堂縁側からは、国宝飛雲閣(通常非公開)の上層階外観を見ることができます。

冬枯れで大木の葉が落ちていますから、けっこう良く見えます。

 

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まず書院エリアの入り口にあたる「虎之間」に入ります。

周囲を虎と竹の障壁画が埋め尽くしていますが、これは全て模写。

一見、真新しさすら感じる部屋で、特に見どころはない空間と感じました。

 

続いて、巨大な能舞台が姿を現します。

「対面所」の南側、野外では日本最大と言われる能舞台

実際、圧倒される大きさです。

北向きであるため、日光を背にすると舞台の奥がよく見えませんが、対面所の薄暗い中からみると目が慣れて、鏡板に描かれた松がくっきり見えてくる仕掛け。

その「対面所」が書院エリア最大の空間。

162畳もある下段の間の奥に上段の間があり、帳台構や違棚が一列に並ぶ非常に豪華な設えです。

夥しい障壁画は狩野光信に学んだ渡辺了慶とその一門によるもの。

なんと現在でもこの巨大な広間は宗祖親鸞を記念する日などに、実際、使用されているのだそうです。

非常に奥行きがありながら、採光が限られているため、日中でも薄暗く、華麗な江戸初期の室内装飾がむしろ厳かな雰囲気を醸し出しています。

写真や画像データからはうかがえない実物の美しさが堪能できると思います。

なお「対面所」の控えの間といった位置付けの小部屋「雀の間」を飾る障壁画は渡辺一派ではなく、円山応瑞、または吉村孝敬によるものと推定されています。

書院エリアの南側を占める「対面所」から西にまわりこむと「白書院」が典雅な内部を現します。

ここでもありとあらゆる障壁や天井に植物や中国古典をモチーフとした絵画が描かれていて、とても寺院とは思えない華麗さ。

むしろ二条城の書院を連想させ、ここに歴代の門主たちが座ったと想像すると、妙な違和感すら覚えます。

 

どの部屋も非常に情報量が多いのでじっくり鑑賞したいところですが、団体行動なのでそうもいきません。

この種の「案内付き」特別公開の限界を感じます。

 

北側には南の能舞台と対をなすように、もう一つ野外の舞台があります。

こちらは重要文化財指定されている南の舞台より一回り小さいのですが、建造は日本最古といわれている国宝能舞台

簡潔にまとめられた入母屋造の屋根が古式を伝えています。

 

書院エリア最後の見どころ、東側には「虎渓の庭」が広がっています。

庭から見て北東に聳える御影堂の大屋根を中国廬山に見立てるというアクロバティックな枯山水

鶴亀の岩に突き出たソテツの異形さにも驚く桃山庭園です。

ただ、一箇所、「黒書院」は公開対象外。

対面所や白書院とは対照的に、狩野探幽による水墨が支配する数寄屋の風流美があるはずですが、ここは写真などで想像するしかありません。

御影堂での説法時間を合わせて約1時間ほど。

長いように思われますが、とにかく見どころが多すぎるのであっと言う間に終わってしまった印象です。

 

手際よく、ときにユーモアを交えながら解説してくれる僧侶の方に感謝しつつも、ここは一度、静かにじっくり拝見したい場所でもあります。

全体が国宝と重文の塊のような書院エリアですから、人数制限と見張り役は必要でしょうけれど、ガイダンスを最小限に絞った「静かな見学コース」もあっても良いかなあと思いました。

 

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