祇園のアンディ・ウォーホル 1974年

 

原榮三郎が撮った京都  Warhol in Kyoto 1974

■2022年9月17日〜2023年2月12日
■ZENBI-鍵善良房-KAGIZEN ART MUSEUM

 

現在、京都市京セラ美術館で開催されている「アンディ・ウォーホル・キョウト」展と同期したミニ展覧会です。
京都市美展の企画も担当している川端丸太町のイムラアートギャラリーが、鍵善の小さい2階建てギャラリーの空間を上手に使って、ウォーホルをとらえた原榮三郎の写真100枚を展開。
一部カラー写真もみられますが、大半がモノクロです。

1974年の来日時に京都を訪れていたウォーホルの写真で全て構成されていますから、「ウォーホル・イン・キョウト」という意味では、岡崎の展覧会よりもこちらの方がむしろタイトルと内容が合致しているといえるかもしれません。

原榮三郎が撮った京都『Warhol in Kyoto 1974』 – ZENBI | ZENBI -鍵善良房- KAGIZEN ART MUSEUM 公式ウェブサイト

 

さてアンディ・ウォーホルはその生涯で1956年と74年の2回来日し、いずれも京都をその訪問地に含めています。
京都市美術館のウォーホル展では主に1956年の旅を中心に、そのときに描かれたスケッチなどを展示。
ウォーホルがチャールズ・リザンビーと共に訪ねた主な洛中洛外の名所も同展の会場内で図示されていました。

1956年に彼が訪問したといわれる場所は以下の通りです。

都ホテル(宿泊先)
平安神宮
清水寺
北野天満宮
・蓮華王院(三十三間堂)
桂離宮
龍安寺
京都御所
・山中商会京都支店(現 京都山中商会パビリオンコート)
・織宝苑(現 真如苑所有の「流響院」)

このときのウォーホルは、まだ大ポップアーティストとして有名になる前であり、一外国人観光客として自在、かつ計画的に名所をふらついていて、上記以外にも、リザンビーと一緒にゲイバーなどを訪れていたそうです。

 


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しかし、1974年の訪日では、本人の立場が全然違っていました。
彼はこの国でも十分すぎるほど有名なアーティストになっていたのです。
この二度目となる来日は、大丸(東京店・神戸店)で開かれたウォーホル展に伴って実現したものです。
プライヴェートな旅行であった56年のそれとは全く彼を取り巻く環境自体が様変わりしていたことになります。

100枚の写真は全てスナップショット的な、作為のないザラっとした質感で写されています。
しかし、被写体となっているウォーホルには、多くの場合、マネージャーであるフレッド(フレデリック)・ヒューズや取り巻いている人物たちが一緒に写っていて、いかにも「仕事の合間」感が漂います。
ふらふらと彷徨する旅人ウォーホルの面白さよりも、大アーティストのお忍び姿的な印象が強く、正直、さほど面白い画像が多いわけではありません。
1968年のヴァレリー・ソナリスによる銃撃事件で受けた瀕死の負傷から6年後のウォーホル。
まだ50歳前ですが、か弱そうな体型からは奇妙な老成感も漂っています。

 

 

ウォーホル訪日に同行し、終始シャッターを押し続けていたという、原榮三郎(1935-2004)は当時40歳ちょっと手前。
ロンゲにカンフーマスターのような口髭を蓄え、強烈に個性的な風貌をしていた原の、まさに脂がのりきっていたような時期とみられ、ピンボケや手ブレは全く気にせず、ウォーホルと眷属、そしてその場の空気をさっと掬い上げています。
祇園新橋、新門前通、桂離宮三十三間堂
1956年の来日時には気ままに動けたのでしょうが、このときは訪れる場所も限られていたようです。

祇園の白川沿いを散歩するウォーホルの手にはレジ袋のようなものが確認できます。
てっきりどこかの土産物店の袋かと思いきや、どうやらこの袋はあらかじめ持参してきたもののようです。
彼は大袈裟な高級バックなどは持たず、こうしたショップでもらうビニール袋みたいなものを常用していたとのこと。
さりげないようでいて、実は「ハズす」ところを演出しています。
ウォーホルらしさが地味に写し出されています。

 


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原による身軽なフットワークと素早いシャッター技のおかげで、取り巻きに囲繞されているにも関わらず、このアーティストの「素」みたいな表情がとらえられているようにも見えます。
しかし、そこは油断ならない人ですから、どこまで「普通」のウォーホルがカメラに取り込まれたのかは、実は、よくわかりません。
ただ、一見飄々としているようにみえているものの、この人から立ち上る恐ろしいまでの孤独感は、周囲の連中の醸し出す雰囲気があまりにも白々しい分、どことなく伝わってくるような気がします。

 


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写真群は壁面のみの展示です。
ウォーホルが訪れた場所の単位でまとめられています。
独立ケースには鍵善自慢の黒田辰秋による漆器工芸が陳列され、モノクロが大半の世界に華を添えていました。

なお、アート&京都好きインスタ女子&男子用に、イムラアートによって「花」の壁紙があしらわれた自撮り用コーナーが設営されています。