カトリック河原町教会|京都モダン建築祭より

 

今年2022年11月11日から13日にかけて初めて開催された「京都モダン建築祭」。

カトリック河原町教会」の内部が一般に公開されたので見学してみました。

2022.kenchikusai.jp

 

以前、この教会の北側には「京都ロイヤルホテル」が覆い被さるように隣接し、南側の京都朝日会館との距離もほとんどありませんから、その全体像が掴みきれないもどかしさがありました。

しかし、京都ロイヤルホテルは、2018年の廃業後、解体。
現在、新しいホテルの建設工事が行われています。
結果、カトリック河原町教会「聖フランシスコ・ザビエル大聖堂」の北側面が、クレーン越し、かつ、一時的とはいえ、よく見える状態になっていて、その特徴的な屋根の曲面が河原町通からも視認できると思います。

 

 

竣工は1967(昭和42)年です。
カトリック教会に属し日本において多くの教会建築を設計したスイス人の司祭兼建築家であったカール・フロイラー(Karl Freuler 1912-2000)と、こちらも京都を中心に夥しい建築設計を行なった大家、富家宏泰(1919-2007)が協働し、設計されています。

今回の建築祭でピックアップされた建築は、京都府庁舎&市庁舎に代表されるクラシカルな、主に戦前のものが中心といえます。
つまり、「モダン建築祭」といっても、いわゆる「モダニズム建築」はほとんど含まれていません。
例外的に特別内部公開されたのは、この教会と、村野藤吾による都ホテル(現ウェスティン都ホテル京都)の一部分(ウェスティンが「村野スイート」とやや恥ずかしいネーミングをしたアフタヌーンティー用の部屋など)くらいだったかと思います。

さて、河原町の大聖堂、初めてその内部に入りました。

驚きの空間が広がっています。

 

カトリック河原町教会 内部

 

この教会最大の特徴である、下方に勾配曲線を描く巨大な屋根の「反り」。
内側に曲面が落ち込んでくるので、本来はボリューム的に狭く感じられるはずなのですが、実際の印象は逆なのです。
急峻に収斂していく屋根の中心軸に向かって、上へ上へと視線が誘導されます。
実際の高さよりもその内部空間はより高く感じられるような印象を受けました。

もう一つ、堂内に強い印象を与えている要素が、「光」です。
この建物の側面は、大半がステンドグラスと曇りガラスで覆われていて、光を遮る壁や太めの柱がほとんどありません。
左右から陽光がふんだんに取り込まれる中、内装がホワイト系のトーンでまとめられているため、圧倒的な明るさが堂内を満たすことになります。

また、東側の建物背面もほとんどステンドグラスが嵌め込まれていて、ほぼ「ガラス張り」の状態です。
加えて、オルガンなど、光を遮る設備や装飾は祭壇とは反対側の河原町通に面した入口上層部にまとめられているので、堂内に入った瞬間、まさに「光の聖堂」に包みこまれるような感覚を覚えることになります。

 

河原町カトリック教会 南側窓の一部

カトリック河原町教会 北側窓の一部

カトリック河原町教会 河原町通側の内部

 

現在は、たまたまかつて北隣に密着して建っていた京都ロイヤルホテルの建物が解体されているため、遮蔽物が取り除かれていることも影響しているのかもしれませんが、これほど明るく清らかな空間が広がっているとは想像していませんでした。

バチカンは、特に戦後、1950年代あたりから、世界各地の教会設計に関して、現代性を取り入れることに積極的で、日本でもモダニズムの教会がいくつか建てられています。

その代表的傑作の一つが、丹下健三による関口台の「東京カテドラル聖マリア大聖堂」ということになりますが、メタリックに光輝くあの教会の内部は、逆に重々しい剥き出しのコンクリートによる陰影が支配する荘厳空間です。
60年代、京都におけるモダニズム建築の名手として実績を上げていた富家宏泰がフロイラーと共に考案した河原町教会の空間演出は、白い軽やかさを何より重んじつつ、屋根曲面による「上昇視線」を強烈にとりこんでいて、丹下の教会とは同じモダニズムといっても真逆の個性をもっています。

 

カトリック河原町教会 東側面

 

 

前述の通り、今、カトリック河原町教会は、その外観がよく見える状況になっています。
こうしてみると、この屋根の形状は、明らかに、神社仏閣のそれに見られる「反り」を意識しているように感じられます。
京都というローカル特性を巨大な屋根に反映させているという点からみると、この60年代の建築は、80年代に登場する「ポスト・モダン」の語法を、モダニズム全盛期に、結果としてかなり大胆に取り入れてしまっていると言えるかもしれません。
逆にそのことが、純粋なモダニズム建築として、さほど評価されてこなかった一因になっているのではないかとも想像できます。

なお、現在の建物はカトリック河原町教会としては二代目にあたり、初代の建物は犬山の明治村に移築されています(「聖ザビエル天主堂」)。

www.meijimura.com

 

こちらは一般受けしそうな明治の西洋古典式教会であり、「京都モダン建築祭」的にはこの初代が現役の形で市内に残っていてくれた方が好都合だったかもしれません。

でも、市内中心部等に限定せず、「府内」とすれば、京都には、この初代河原町教会と通じるクラシカルな名カトリック教会建築が今も現役で残されています。
宮津市にあるカトリック宮津教会「聖ヨハネ天主堂」がそれで、1896(明治29)年に建てられています。
初代河原町教会は1890年の竣工ですから、ほぼ同時期であり、規模は宮津の方が圧倒的に小さいものの、確かに雰囲気がよく似ています。

 

カトリック宮津教会 

カトリック宮津教会 (東側)

 

「京都のモダン建築」は、市内以外にもたくさんあるし、時代的に、もっと現代寄りに幅を広げて対象に含めることも可能かと思われます。
当面ネタには全く困らないでしょう。
このフェスティバルが今後も継続されるのであれば、今回、とりわけ面白かった京都国立近代美術館(槇文彦設計)の「2階 渡り廊下」みたいな不思議に貴重な穴場も含め、対象となる「時空の範囲」をちょっと広げてくれるとありがたいなあ、と感じました。

 

京都国立近代美術館 2階渡り廊下