2025-01-01から1年間の記事一覧

メガロポリス|フランシス・フォード・コッポラ

駄作と評されることは、傑作とされるよりもむしろ難しいことかもしれません。例えば無名の映画人が撮った作品の出来が悪かったとしても、それをことさらに駄作と評価し騒ぎ立てる人はあまりいないでしょう。きちんと駄作と評価されるためには、十分な実績と…

アギーレ/神の怒り|ヴェルナー・ヘルツォーク

ヴェルナー・ヘルツォーク(Werner Herzog 1942-)監督による映画「アギーレ/神の怒り」(Aguirre, der Zorn Gottes 1972)がアマプラで見放題配信されていたので観てみました(2025年6月現在)。この作品は、2022年6月、パンドラの配給による特集企画「ヘルツォ…

「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家」の空虚さ

「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)」(Godard, seul le cinéma 2022)は、昨年(2024年)9月、ミモザフィルムズの配給で日本公開されたドキュメンタリー作品です。公開時に劇場で鑑賞しています。今回、Amazon Prime Videoで見放題配信…

若山牧水とアルコール|『みなかみ紀行』より

若山牧水(1885-1928)が残した随筆や詩を池内紀(1940-2019)が編んだアンソロジー、新編『みなかみ紀行』(岩波文庫 2002年初版)を読んでみました。とても瑞々しく旅の叙景を記した素晴らしいエッセイの数々が集められています。ただ、私には酒飲みで知られたこ…

「エドガルド・モルターラ」が描く究極の理不尽

マルコ・ベロッキオ(Marco Bellocchio 1939-)監督による映画「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」(Rapito 2023)が、Amazon Prime Videoで見放題配信されていたので観てみました。この作品は昨年(2024年)に劇場公開された際、すでに鑑賞していま…

「地獄の黙示録」ファイナルカットで気がついたこと

「地獄の黙示録 ファイナル・カット」(Apocalypse Now Final Cut 2019)が6月13日より、短い期間ではありますが、全国公開されています(配給はKADOKAWA )。フランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola 1939-)監督による最新作「メガロポリス」の公…

秋が来るとき|フランソワ・オゾン

5月末頃からフランソワ・オゾン(François Ozon 1967-)監督の最新作「秋が来るとき」(Quand vient l'automne 2024)が全国公開されています(配給はロングライド)。 じわじわと旨みが染み出すような素晴らしいフランス映画でした。オゾンによる洗練された映画設…

鴨居玲展|美術館「えき」KYOTO

没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く ■2025年5月30日~7月6日■美術館「えき」KYOTO 洋画家、鴨居玲(1928-1985)の回顧展です。大きな規模とはいえませんが、およそ60点の油彩や素描画に加えて、新聞連載への挿絵「弥縫録」シリーズまで、多彩な作品が揃えら…

「我来たり、我見たり、我勝利せり」にみる現実

オーストリア映画「我来たり、我見たり、我勝利せり」(Veni Vidi Vici 2024)が6月初旬より各地のミニシアターで公開されています(配給はハーク)。監督はダニエル・ヘースル(Daniel Hoesl 1982-)とユリア・ニーマン(Julia Niemann 1987-)。ウルリヒ・ザイドル…

大混雑の「超国宝」展後期|奈良国立博物館

奈良国立博物館で開催されている「超 国宝」展が5月20日から後期展示に切り替わりました。前期(GW前)に鑑賞したときも、それなりに賑わってはいましたけれども、6月に入って会期末(6月15日)が近づいてきたせいか、異様な混雑ぶりをみせていて驚きました。こ…

「黒い瞳」4Kロングバージョン|ニキータ・ミハルコフ

ザジフィルムズの配給で、ニキータ・ミハルコフ(Nikita Mikhalkov 1945-)監督による「黒い瞳」(Oci Ciornie 1987)の4K修復ロングバージョンが5月末頃から各地のミニシアターで公開されています。 極めてわかりやすい文芸映画です。同じくチェーホフを原作と…

アンジェラ・ヒューイット|2025.6.1 バロックザール

アンジェラ・ヒューイット ピアノリサイタル ■2025年6月1日 15時開演■青山音楽記念館バロックザール ヨハン・セバスチャン・バッハトッカータ ハ短調 BWV911フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971(休憩20分)パルティータ 第6番 ホ短…

オリヴェイラ「訪問、あるいは記憶、そして告白」

結局、今回の没後10年上映企画「オリヴェイラ2025」で公開された5本を全て鑑賞することになりました。最後に観た「訪問、あるいは記憶、そして告白」」(Visita ou Memórias e Confissões 1982)は、マノエル・ド・オリヴェイラ(Manoel de Oliveira 1908-2015)…

トレンケ・ラウケン|ラウラ・シタレラ

4月下旬から各地で上映が開始されている話題作「トレンケ・ラウケン」(Trenque Lauquen 2022)が、近所のミニシアターで公開されたので観てみました(配給はユーロスペースとドーデスフィルム)。監督はラウラ・シタレラ(Laura Citarella 1981-)、プロデュース…

デビルズ・バス|ヴェロニカ・フランツ&ゼヴリン・フィアラ

クロックワークスの配給で2024年のオーストリア&ドイツ映画「デビルズ・バス」(DES TEUFELS BAD 2024)が5月下旬より全国公開されています。監督はヴェロニカ・フランツ(Veronika Franz 1965-)とゼヴリン・フィアラ(Severin Fiala 1985-)のコンビ。撮影を担当…

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ展

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ ■2025年3月1日〜6月1日■アーティゾン美術館 知名度の高さから考えると、この展覧会のタイトルは「ジャン・アルプとゾフィー・トイバー=アルプ」とした方がしっくりくるように、一見、思えます。ジャン・アルプ(Je…

夜顔|マノエル・ド・オリヴェイラ

「夜顔」(Belle Toujours 2006)はマノエル・ド・オリヴェイラ(Manoel de Oliveira 1908-2015)が98歳頃に監督したポルトガル&フランス映画です。日本では2007年に劇場公開されていますが、私は今回の特集企画「オリヴェイラ2025」で初めて鑑賞しました。2024…

絶望の日|マノエル・ド・オリヴェイラ

マノエル・ド・オリヴェイラ(Manoel de Oliveira 1908-2015)監督によるポルトガル&フランス映画「絶望の日」(O Dia do Desespero 1992)を鑑賞してみました。監督の没後10年企画「オリヴェイラ2025」の中で上映されている一本です。日本での劇場公開は初とな…

アブラハム渓谷|マノエル・ド・オリヴェイラ

マノエル・ド・オリヴェイラ(Manoel de Oliveira 1908-2015)監督の没後10年を記念した特集上映「オリヴェイラ2025」の中で公開されている大作、「アブラハム渓谷」(Vale Abraão 1993)を鑑賞してみました。[完全版]と銘打たれています。日本劇場初公開とな…

パウル・クレー展|兵庫県立美術館

パウル・クレー展 創造をめぐる星座 ■2025年3月29日〜5月25日■兵庫県立美術館 パウル・クレー(Paul Klee 1879-1940)の芸術を、その初期から晩年にかけて網羅的に振り返るという非常に意欲的な企画です。パウル・クレー・センター(Zentrum Paul Klee)の協力に…

カニバイシュ|マノエル・ド・オリヴェイラ

キングレコードの提供、プンクテの配給でマノエル・ド・オリヴェイラ(Manoel de Oliveira 1908-2015)の特集上映企画「オリヴェイラ2025」が4月下旬頃より各地のミニシアターで開催されています。 oliveira2025.jp 「カニバイシュ」(Os Canibais 1988)を観て…

日本国宝展|大阪市立美術館

大阪・関西万博開催記念 大阪市立美術館リニューアル記念特別展日本国宝展 ■2025年4月26日~6月15日 大混雑が必至の展覧会です。展示内容の豪華さからみて、土日・祝日はもちろん、平日でもおそらくまともな環境で鑑賞することはできないだろうとみていました…

ガール・ウィズ・ニードル|マグヌス・フォン・ホーン

5月16日より、マグヌス・フォン・ホーン(Magnus von Horn 1983-)監督による「ガール・ウィズ・ニードル」(The Girl with the Needle 2024)が全国の劇場で上映されています(配給はトランスフォーマー)。大好物の北欧系スリラー映画ということもあり、早速公開…

泉屋博古館リニューアルオープン

リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち ■2025年4月26日〜6月8日 2024年1月から改修工事のために休館していた鹿ヶ谷の泉屋博古館が4月26日、約1年3ヶ月ぶりに再開館しました。現在、リニューアルオープンを記念した名品展が開催さ…

KYOTOGRAPHIE 2025より

4月12日から開催されていた今年(2025年)のKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭が5月11日に閉幕しました。昨年に比べると規模がちょっとだけ小さくなった印象を受けたりもしましたけれど、どの会場にも濃厚にアーティストたちの個性が漂っていて、非常に密度の高い写…

日本、美のるつぼ展|京都国立博物館

大阪・関西万博開催記念特別展 日本、美のるつぼ ー異文化交流の軌跡ー ■2025年4月19日~6月15日■京都国立博物館 非常に混雑が予想された展覧会です。ただ、京博は昨年度に引き続き金曜日限定で夜間開館を実施してくれています。20時までと比較的遅くまで開…

エレファント|ガス・ヴァン・サント

京都シネマと、配給を担当するGucchi’s Free School(グッチーズ・フリースクール)が協働して継続している「きょうとシネマクラブ」上映企画の一本として、ガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant 1952-)監督による2003年のアメリカ映画「エレファント」(Elephant…

安楽寿院特別公開と阿弥陀如来坐像

竹田の安楽寿院(真言宗智山派)が特別公開されたのでお邪魔してみました(京都古文化保存協会による非公開文化財特別公開の一環・2025年4月26日〜5月11日)。 www.kobunka.com 安楽寿院へのアクセスは比較的簡単です。京都市営地下鉄・近鉄京都線、竹田駅南側の…

けものがいる|ベルトラン・ボネロ

4月25日より2023年公開のフランス&カナダ映画「けものがいる」(La bête/The Beast 2023)が全国公開されています(配給はセテラ・インターナショナル)。監督ベルトラン・ボネロ(Bertrand Bonello 1968-)が脚本と音楽まで担当し、共同プロデューサーにグザビエ…

ヴィクトリア&アルバート博物館のビアズリー

異端の奇才 ビアズリー ■2025年2月15日〜5月11日■三菱一号館美術館 オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley 1872-1898)の画業を、彼のまとまったコレクションを有するヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)からの出展品を中…