2023-01-01から1年間の記事一覧

梥本一洋「鵺」をめぐる妄想|京都市京セラ美術館

2023 冬期コレクションルーム 特集「昭和前期の日本画と古典」 ■2023年12月22日〜2024年2月25日■京都市京セラ美術館 現在開催されている京都市美の冬コレでは1930年代を中心に描かれた京都画壇の作品が数多く紹介されています。 菊池契月による新古典的な大…

「シュルレアリスムと日本+京都」展|京都文化博物館

『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本 ■2023年12月16日~2024年2月4日 シュルレアリスムと京都 ■2023年12月23日〜2024年2月18日■京都文化博物館 「シュルレアリスムと日本」展は、アンドレ・ブルトン(André Breton 1896-1966)が1924年10月…

円山応挙の孔雀と滝|相国寺承天閣美術館

若冲と応挙 II期 ■2023年11月19日〜2024年1月28日■相国寺承天閣美術館 伊藤若冲と円山応挙、近世京都画壇の巨人二人を特集する企画展の第2期です。第一展示室はI期でも紹介されていた、若冲の「釈迦三尊像」とコロタイプ複製による「動植綵絵」がそのまま継…

「ファースト・カウ」と「ショーイング・アップ」

ケリー・ライカート監督(Kelly Reichardt 1964-)の作品2本、「ファースト・カウ」(First Cow 2020)と「ショーイング・アップ」(Showing Up 2023)がほぼ同時公開されたので鑑賞してみました。 前者は東京テアトルとロングライド、後者はU-NEXTの配給です。 fi…

髙橋耕平と津高和一の対話|芦屋市立美術博物館「時代の解凍」

art resonance vol.01 時代の解凍Defrosting Time: Art Across Generations ■2023年10月28日〜2024年2月4日■芦屋市立美術博物館 芦屋市立美術博物館が館蔵品と現代アーティストを共演させるという意欲的な企画展を開催しています。組み合わされているアーテ…

福田美術館の珍作傑作江戸絵画コレクション

ゼロからわかる江戸絵画 ーあ!若冲、お!北斎、わぁ!芦雪ー ■2023年10月18日~2024年1月8日■福田美術館 & 嵯峨嵐山文華館 すっかりお馴染みとなった嵐山の二館連携企画による、近世江戸絵画コレクション展です。 後期展示(12月6日〜1月8日)にお邪魔してみ…

テート美術館展にみるライト、マーティン、ターナー

テート美術館展 光 ー ターナー、印象派から現代へ ■2023年10月26日〜2024年1月14日■大阪中之島美術館 夏に乃木坂の国立新美術館で開催されたテート美術館展が大阪、中之島に巡回してきました。 以下の通りごく一部、展示品が東京展と異なっています。 《大…

樂了入の革新|樂美術館「定本 樂歴代」展

開館45周年記念「定本 樂歴代」 ■2023年9月2日〜12月24日■樂美術館 三年ほど前にも現十六代吉左衛門の襲名を記念して「樂歴代」と題した同種の展覧会が開催されています。 今回は樂家だけでなく、本阿弥光悦や玉水焼三代といった外戚・庶子筋まで網羅し、長…

「VORTEX ヴォルテックス」が描く分化された世界

ギャスパー・ノエ(Gaspar Noé 1963-)の監督・脚本・編集による「VORTEX」(2021)が、12月8日から新宿シネマカリテ他、各地のミニシアターで公開されています(配給はシンカ)。 ちょっと苦手な「老夫婦もの」映画なのですが、不穏に美しいアートワークと主役二…

木屋旅館の足元湧出貸切風呂|鳥取県・三朝温泉

「木屋旅館」は三朝温泉街のほぼ中心に位置する老舗の宿です。 創業は1868(明治元)年。江戸時代には鳥取藩から庄屋の役目を与えられていたという由緒をもっているそうですが、敷居が高い高級宿ではありません。 予約をしておけば、JR倉吉駅まで、到着する電…

「5番目の国立博物館」としての皇居三の丸尚蔵館

皇居三の丸尚蔵館 開館記念展 皇室のみやびー受け継ぐ美ー第1期「三の丸尚蔵館の国宝」 ■2023年11月3日~12月24日 「宮内庁三の丸尚蔵館」あらため「皇居三の丸尚蔵館」がリニューアル記念の特別展「皇室のみやび」を開催しています。 全体の会期末は来年202…

クリスチャン・ツィメルマン|2023.12.9 西宮北口

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル ■2023年12月9日■兵庫県立芸術文化センター 大ホール ショパン:夜想曲 第2番 変ホ長調 Op. 9-2、夜想曲 第5番 嬰へ長調 Op. 15-2、夜想曲 第16番 変ホ長調 Op. 55-2、夜想曲 第18番 ホ長調 Op. 62-2 ピアノ・…

ファンタン=ラトゥールの美味しい絵: SOMPO美術館 ゴッホ展

ゴッホと静物画―伝統から革新へ ■2023年10月17日~2024年1月21日■SOMPO美術館 今やさまざまな象徴的意味をもってしまったSOMPO美術館の「ひまわり」。この作品を主役とした記念特別展が開催されています。 当初は2020年のリニューアルオープン時に開催される…

二条城二の丸御殿「黒書院 四の間」の美意識

菊と扇~〈黒書院〉四の間~ ■2023年10月5日~12月3日■二条城障壁画 展示収蔵館 外国人観光客や修学旅行生たちで大賑わいの二条城。すっかりコロナ前の状況に戻ってしまいましたが、嵐山周辺や清水寺、祇園界隈と違って、この大人気スポットは不思議とオーバ…

東福寺 龍吟庵公開と重森三玲の「節度」

東福寺の塔頭、龍吟庵が久しぶりに公開されたのでお邪魔してみました(2023年11月1日〜12月3日)。 コロナ制約も解けた中、ようやく見ごろを迎えた紅葉の季節ですから、名所通天橋を中心とした東福寺境内はまるでお祭りのような賑わいをみせています。しかし、…

増田清 顕道会館|京都モダン建築祭 2023より

昨年2022年、初めて開催された「京都モダン建築祭」。 好評を受け今年も開催されることになったようです。施設によっては大行列が発生し、一部でかなりの混乱をみせた前回の課題をふまえ、キャパオーバーが懸念された作品には事前申込制を採用するなど、改善…

狩野探幽が写した徽宗の鳩|泉屋博古館の表装展

特別展 表装の愉しみ -ある表具師のものがたり ■2023年11月3日〜12月10日■泉屋博古館 来年から2025年の春まで改修工事に入る鹿ケ谷の泉屋博古館。一時休館となる前、最後の企画展が開催されています。 「表装」にスコープがあてられていますから、ちょっと…

長沢芦雪の幽霊|大阪中之島美術館

特別展 生誕270年 長沢芦雪 ー奇想の旅、天才絵師の全貌ー ■2023年10月7日〜12月3日■大阪中之島美術館 会期は2ヶ月近くあるものの、11月7日を境に展示品の9割近くが入れ替わるという特別展です。実質、1ヶ月+1ヶ月の長沢芦雪大レトロスペクティブ、パート1&…

東京国立博物館「やまと絵」展の妖しさ怪しさ

特別展「やまと絵-受け継がれる王朝の美-」 ■2023年10月11日〜12月3日■東京国立博物館 日本絵画史に残る超有名作品の出現比率でみると、昨年の東博創立150年を記念した「国宝全部見せます」展よりも、ひょっとすると高いかもしれません。圧倒的規模と質を…

高山寺 金堂 特別公開

栂尾 高山寺の金堂内部が特別公開されたのでお邪魔してみました。(京都古文化保存協会主催 2023年11月11日〜20日) 外観はいつでも鑑賞できますが内部の公開は初めてなのだそうです。靴を脱いで袋に入れ、御堂の中に入るスタイルです。事前予約等は必要ありま…

吉山明兆を「写」した狩野派絵師たち|東福寺展より

特別展「東福寺」(後期展示) ■2023年11月7日〜12月3日■京都国立博物館 10月7日からスタートしている京博の「東福寺」展。 非常に素晴らしい内容なので後期展示も鑑賞してみました。かなりの作品が前期から入れ替わっています。 なお、東福寺自体の紅葉は11月…

根津美術館の北宋書画展と「五馬図巻ミステリー」

特別展 北宋書画精華 ■2023年11月3日~12月3日■根津美術館 展覧会のタイトルまで漢文調を採用した根津美術館渾身の企画展です。 本展のために各地から集められた作品数自体は40点程度とそれほど多くはありません。 しかし、それぞれの書画が恐ろしく濃密なも…

蔵王権現大集合と道長の経筒|MIHO MUSEUMの金峯山展

2023年度秋季特別展 金峯山の遺宝と神仏 ■2023年9月16日〜12月10日■MIHO MUSEUM 質・量ともに驚異的な大修験道特集展です。期間によって展示品の入れ替えがあるものの、約180件にのぼる金峯山にまつわる品々が全国から集められています。しかも国公立ミュー…

MUCA展にみるストリートアートの「無化」|京都市美

MUCA展 ICONS of Urban Art 〜バンクシーからカウズまで〜 ■2023年10月20日〜2024年1月8日■京都市京セラ美術館 現在、京都市美で同時開催されている「井田幸昌展」と共に、おしゃれ系デートの出し物としてとっても好適な企画展ではないでしょうか。 もちろん…

「大仏」としてのコンスタンティヌス帝像|永遠の都ローマ展

永遠の都ローマ展 ■2023年9月16日~12月10日■東京都美術館 いかにも都美らしいブロックバスター系の企画なので、鑑賞するか否かちょっと迷っていたのですが、日時指定予約不要の平日にぶらりと覗いてみたところ、予想よりも混雑していない雰囲気だったので入…

八坂神社本殿「裏側」公開と円山応挙の「鶏」

今年も京都古文化保存協会による恒例の秋季文化財特別公開がスタートしています。 今回は祇園、八坂神社が対象となっていたので見学してみました。意外なことに初公開となるのだそうです(2023年11月2日〜11月12日)。 www.kobunka.com つい最近である2020年に…

土田麦僊の変遷|京都国立近代美術館「京都画壇の青春」

開館60周年記念京都画壇の青春 ー 栖鳳、松園につづく新世代たち ■2023年10月13日〜12月10日■京都国立近代美術館 京近美、開館60周年記念特別展シリーズの第4弾です。 今年の2月、開館記念の初回企画にこの美術館がとりあげた画家は甲斐荘楠音(1894-1978)で…

「キュビスム展」のドローネー夫妻|国立西洋美術館

パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展 ー 美の革命ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ ■2023年10月3日〜2024年1月28日■国立西洋美術館 夏のマチス展(都美)に続く、ポンピドゥーセンターのコレクションを中心とした特別展です。 建物老朽化によ…

万寿寺と三聖寺の残影|京都国立博物館「東福寺展」

特別展「東福寺」 ■2023年10月7日〜12月3日■京都国立博物館 東京国立博物館での展示を終えてから、やや長めのインターバルを置き、まるで「紅葉の通天橋」とタイミングを合わせるかのように、「東福寺」展が京博に巡回してきました。本当に紅葉客で混雑する…

和鏡の密かな愉しみ|東京国立博物館の「羽黒鏡」特集

羽黒鏡 ー 霊山に奉納された和鏡の美 ■2023年9月26日~11月19日■東京国立博物館(平成館企画展示室) 東博の、平成館から本館に向かうプロムナード的な一室(考古展示コーナーの向い)で、現在、こっそりと、とても素敵な特集展示が行われています。 「羽黒鏡」…