2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

北澤憲昭『眼の神殿』と「美術」

眼の神殿 ――「美術」受容史ノート (ちくま学芸文庫) 作者:憲昭, 北澤 発売日: 2020/12/14 メディア: 文庫 ■北澤憲昭著『眼の神殿 - 「美術」受容史ノート』(ちくま学芸文庫) 美術の授業でひどく劣等感を埋め込まれたような人は別にして、「美術」という言葉…

松坂屋本店のアルカリ硫黄泉|神奈川県 芦ノ湯温泉

リニューアル後、かなりお値段の高い宿になってしまったのですが、箱根の中でもとびきりユニークで麗しいその湯質の魅力に負けてしまい、結局毎年のようにリピートしている宿です。 箱根湯本からバスで約40分ほど。最寄りのバス停は「東芦ノ湯」です。 もう…

異形閣三態|金閣・銀閣・銅閣?

八坂神社のすぐ近くに聳える伊東忠太設計の「祇園閣」。 このコンクリート塔がもつ不気味に異形な魅力については過去にも雑文を書いたことがありました。 祇園閣を建てた明治の大実業家・大倉喜八郎は、おそらく洒落のつもりで言ったのでしょうが、この銅の…

八木一夫「白い箱 OPEN OPEN」

京都国立近代美術館の「2020年度第4回コレクション展」(2021年3月7日まで)を覗いてみました。 www.momak.go.jp 陶芸家、石黒宗麿が特集されています。 それに因んで、石黒と親交があった作家による館蔵工芸作品がいくつか展示されていました。 北大路魯山人…

知恩院 勢至堂の役割

「勢至堂」は知恩院境内の最も奥まったところにあります。江戸初期に建てられた有名な国宝の三門、御影堂がもつ荘重さはありません。 中規模の入母屋造り。 地味ながら桃山前の古式を伝えている貴重な重要文化財です。 1530(享禄3)年の建造。 室町幕府第十二…

砥綿正之+松本泰章 DIVINA COMMEDIA

今年(2021年)1月23日から京都市京セラ美術館ではじまった「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989–2019」。 大きな暗室の中で、ある映像作品が上映されています。 "DIVINA COMMEDIA" ダンテの『神曲』と題された作品。 長くタイトル画像が提示されたあと、防…

アバド&ルツェルン祝祭管 ブルックナー第5番

Symphony No. 5 [Blu-ray] [Import] アーティスト:Lucerne Festival Orch,Abbado 発売日: 2012/04/30 メディア: Blu-ray ブルックナー: 交響曲第5番 変ロ長調 (ノヴァーク版) ルツェルン祝祭管弦楽団指揮: クラウディオ・アバド (Accentus Music ACC10243BD …

アファナシエフのベートーヴェン

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 作品13「悲愴」 ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 作品作品27-2「月光」 ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 作品57「熱情」 ヴァレリー・アファナシエフ (Sony Classical SICC-10223 SACDハイブリッド 2015年リリース) …

ラルジャンのサウンド・トラック|ロベール・ブレッソン

ラルジャン ロベール・ブレッソン [Blu-ray] 発売日: 2018/01/26 メディア: Blu-ray ラルジャン (1983年)出演: クリスチャン・パティ、カロリーヌ・ラング、ヴァンサン・リステルッチ、シルヴィ・ヴァン・デン・エルセン 他撮影: パスクァリーノ・デ・サンテ…

ヤノフスキRSB 「タンホイザー」|PENTATONE

Tannhauser 発売日: 2013/03/26 メディア: CD リヒャルト・ワーグナー: タンホイザー 領主ヘルマン: アルベルト・ドーメンタンホイザー: ロバート・ディーン・スミスヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ: クリスティアン・ゲルハーヘルヴァルター・フォ…

平等院鳳翔館の空間美|栗生明設計

宇治、平等院の境内、鳳凰堂のすぐ南に寺宝を収めた「鳳翔館」があります。 設計は栗生明(1947-)。 2001年の竣工です。平等院拝観料の中に鳳翔館の鑑賞料金も含まれています。 しかし、ここは、お寺に附随する「宝物館」というレベルを超えていて、独立した…

八坂神社 国宝化された本殿と重文西楼門

昨年2020年の秋頃から、四条河原町の髙島屋入り口に、八坂神社本殿が国宝に指定されたことを寿ぐメッセージが掲示されています。 もともと重要文化財だった本殿の国宝化をこの掲示ではじめて知りました。八坂神社のHPによると、2020年12月23日、つまりつい先…

ガッティ&コンセルトベホウ「サロメ」

リヒャルト・シュトラウス : 楽劇「サロメ」 (Strauss : Salome / Gatti | Royal Concertgebouw Orchestra) [2SACD Hybrid] [Import] [日本語帯・解説・歌詞対訳付] アーティスト:ダニエレ・ガッティ,ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団,ランス・ライアン,…

伊東忠太 祇園閣

円山公園の南、高台寺方面に向かう坂を上がっていくと、突然、摩訶不思議な楼閣が目に入ってきます。 伊東忠太設計による「祇園閣」です。 施主は大倉喜八郎。 1927(昭和2)年に建てられた、れっきとした鉄筋鉄骨コンクリート造の近代建築です。 同じく伊東に…

ミケランジェリ 1973年東京ライヴ

アルトゥーロ・ベネデッティ=ミケランジェリ・ライヴ・イン東京 1973 (ARTURO BENEDETTI MICHELANGELI Live in Tokyo 1973) [非圧縮SACDシングルレイヤー] アーティスト:アルトゥーロ・ベネデッティ=ミケランジェリ 発売日: 2012/07/20 メディア: CD シュー…

「源氏物語」は誰が書いたのか?|今野真二『日本語の考古学』

日本語の考古学 (岩波新書) 作者:今野 真二 発売日: 2014/04/19 メディア: 新書 今野真二著 『日本語の考古学』 (岩波新書 2014年4月) 『万葉集』から漱石の『こころ』まで。 多彩なテキストを豊富にとりあげながら、「現代」の単眼的な視点では見えてこない…

ベーム&VPO 「新世界より」(SACD)

ドヴォルザーク: 交響曲第9番 ホ短調 作品95 「新世界より」 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団指揮: カール・ベーム(DG/TOWER RECORDS PROC-2195 SACDハイブリッド) 第1楽章冒頭、これ以上ないといえるほど柔らかい弦群の響きで音楽が導入されます。 1978…

伊東忠太 本願寺伝道院

日本建築史研究の泰斗、太田博太郎によれば、この分野を最初に開拓した人が伊東忠太ということになります(美術出版社『日本建築様式史』P.4)。 1898(明治31)年に発表された彼の『法隆寺建築論』が日本初の本格的な日本建築史研究の書といわれています。 その…

榊原澄人「浮楼」にみる反復と円環

今年の文化庁メディア芸術祭京都展(2021.1.5〜1.13)で上映された「短編プログラム」9作品。 10分前後の映像が続きました。 kyoto2020.j-mediaarts.jp 短い時間の中で何を表現し続け、何を表現し終えるか。 田中秀幸やINDUSTRIAL JPのように、連続反復するミ…

INDUSTRIAL JP の「音楽」

1月5日から13日まで京都文化博物館で開催されている文化庁メディア芸術祭京都展。 展示コーナーとは別にフィルムセンターで過去の受賞作等を上映しています(無料・事前予約制)。 「短編プログラム」では10分前後の映像9作品まとめて上映。 ラインナップは以…

タレスがなぜ最初の哲学者なのか 田中美知太郎『古代哲学史』

古代哲学史 (講談社学術文庫) 作者:田中美知太郎 発売日: 2020/12/10 メディア: Kindle版 田中美知太郎著『古代哲学史』(講談社学術文庫)を読んでみました。 「万物の始原は水である。」 誰しもこの言葉が間違っていると認識しているのに、タレスが、なぜ「…

モントゥー「ダフニスとクロエ」SACD化

ラヴェル : バレエ「ダフニスとクロエ」 (全曲) 他 (Maurice Ravel : Rapsodie Espagnole | Pavane pour une Infante defunte | Daphnis & Chloe, ballet / Pierre Monteux) [SACD Hybrid] [輸入盤] 発売日: 2013/04/30 メディア: CD モーリス・ラヴェル■ス…

DUMB TYPE 高谷史郎 -自然とテクノロジーのはざま

「DUMB TYPE 高谷史郎-自然とテクノロジーのはざま」(2018)京都文化博物館フィルムシアター(2021年1月 文化庁メディア芸術祭京都展での上映) 出演:高谷史郎、坂本龍一、長谷川裕子、池田亮司、サイモン・フィッシャー・ターナー 他 監督: ジュリオ・ボアト …

文化庁メディア芸術祭 京都展(2021)

文化庁メディア芸術祭 京都展 科学者の見つけた詩 -世界を見つめる目- ■2021年1月5日〜13日 ■京都文化博物館別館ホール 一連のコロナ事務を済ませて入場すると、まず2階展示室の映像作品を鑑賞するように誘導されました。 高嶺格の「ジャパン・シンドローム…

分離派建築会100年

分離派建築会100年 建築は芸術か? ■2021年1月6日〜3月7日■京都国立近代美術館 観る展覧会というより、読む展覧会でした。 新橋のパナソニック汐留美術館で開催されていた分離派展。 京近美に巡回してきました。 お世辞にも広いとはいえない汐留に比べるとゆ…

江里佐代子 截金の世界

京の至宝II 江里佐代子 截金の世界 ■2021年1月2日〜24日■美術館「えき」KYOTO 截金という典型的な伝統工芸を、ある意味、解き放ったアーティスト、といえるかもしれません。 繊細さの極地、ミクロの金箔技法です。 しかも近世、特に本願寺と結びついた仏教美…

「ざくろの色」のチアウレリ|セルゲイ・パラジャーノフ監督

「ざくろの色」 (1969年 ソ連) 配給: パンドラ 出演: ソフィコ・チアウレリ、メルコン・アレクヤン、ヴィレン・ガスチャン他撮影: スゥレン・シャフバジャン美術: ステパン・アンドラニキャン音楽: チグラン・マンスゥリャン監督・原案: セルゲイ・パラジャ…

火の馬 (セルゲイ・パラジャーノフ)

「火の馬」 (1964年 ソ連) 配給: パンドラ 出演: イワン・ミコライチューク、ラリーサ・力ードチニコワ、タチヤーナ・ベスタエワ 他 脚本: イワン・チェンディ 撮影: ユーリー・イリエンコ 監督・脚本: セルゲイ・パラジャーノフ 冒頭、教会前の縁日広場のよ…

アシク・ケリブ |セルゲイ・パラジャーノフ

「アシク・ケリブ」 (1988年 ソ連) 配給: パンドラ 出演: ユーリー・ムゴヤン、ヴェロニカ・メトニーゼ、ソフィコ・チアウレリ他脚本: ギーヤ・バドリーゼ撮影: アルベルト・ヤプリヤン音楽: ジャヴァンシル・クリエフ監督: セルゲイ・パラジャーノフ、ダヴ…

槇文彦が語る「東京」|SD選書『アーバニズムのいま』

アーバニズムのいま (SD選書271) 作者:槇 文彦 発売日: 2020/06/09 メディア: 単行本 槇文彦著『アーバニズムのいま』 (鹿島出版会 SD選書271) "decency" 「礼儀」とか「謙虚」などと訳されるこの単語を著者は「社会的に見苦しくない」という意味に捉えてい…