2022-01-01から1年間の記事一覧

李禹煥と松延総司の「石」

兵庫県立美術館開館20周年記念李禹煥 Lee Ufan ■2022年12月13日〜2023年2月12日 国立新美術館での展示を終え、李禹煥(Lee Ufan リ・ウファン 1936-)の大個展が兵庫県美に巡回してきました。 www.artm.pref.hyogo.jp 神戸展は「西日本初」と銘打たれています…

奈良県立美術館の大橋コレクション展

企画展「絵画のたのしみ 奈良県立美術館所蔵名品展《冬》」 ■2022年11月26日〜12月25日 奈良県美、今年の冬コレは、日本前衛絵画です。 全館を使って自慢の大橋コレクションをたっぷり開陳しています。 見応えがありました。 www.pref.nara.jp 大橋嘉一(1896…

春日大社若宮国宝展と藤原頼長

式年造替記念特別展春日大社 若宮国宝展 ―祈りの王朝文化― ■2022年12月10日〜2023年1月22日■奈良国立博物館 平安時代末期、院政期に生み出されたおそらく最高の工芸美は、京都ではなく、奈良にあります。 今年10月の式年造替完了を記念し、その春日大社若宮…

アウグスト・マッケ「公園で読む男」

京都国立近代美術館で開催されている「ルートヴィヒ美術館展」(2022年10月14日〜2023年1月22日)。 実業家ペーター・ルートヴィヒとその妻イレーネのコレクション寄贈がこのミュージアム発足(1976年)の起因となっているわけですが、それ以前に、ケルン市にも…

大阪中之島美術館のGUTAI展

大阪中之島美術館 国立国際美術館 共同企画すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合 ■2022年10月22日〜2023年1月9日■大阪中之島美術館 中之島の2館で同時開催されている大「具体」展。 先月、国立国際美術館の方をまず鑑賞、今回は中之島美術館側です。 隣り…

パリ・オペラ座展|アーティゾン美術館

パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂 ■2022年11月5日〜2023年2月5日■アーティゾン美術館 マネ、ドガの傑作から作曲家たちの貴重な自筆楽譜、さらにはディアギレフ愛用の帽子まで。 質と量を兼備したおそるべき大企画展。 じっくり楽しむとすれば3時間は必要か…

京都御所 小御所障壁画をめぐって

京都の夏に、花火はありません。 正確には、市内で大規模な打ち上げ花火大会などが行われることはない、というべきでしょうか。 木造家屋が密集する街なので当たり前のように思われますが、昭和29年頃までは普通に打ち上げられていたのだそうです。 それが実…

木島櫻谷の山水と扇

特別展 木島櫻谷 ― 山水夢中― ■2022年11月3日〜12月18日■泉屋博古館 宮脇賣扇庵 天井画制作120周年特別企画「木島櫻谷の扇展」 ■2022年11月16日~12月7日 木島櫻谷リバイバルが進行しています。 昨年は嵐山の福田美術館が姉妹館の嵯峨嵐山文華館と二館同時に…

旧川崎美術館の国宝 2+1 同時公開

神戸市立博物館で開催されている好企画「よみがえる川崎美術館」展(2022年10月15日〜12月4日)。 前後期の区切りが明確に設けられている特別展ではありませんが、かなりの大物作品が会期中、入れ替わります。 結局、2回、鑑賞することになりました。 www.kobe…

北陸大学蔵の黄瀬戸茶碗|京博「茶の湯」展より

京都国立博物館 平成知新館1階の北西コーナーに位置するやや小さい展示室空間。 京博開催の特別展では、ここに、企画の「目玉」となる作品が集められる傾向があります。 2022年10月18日から12月4日にかけて開催された「茶の湯」展は、質量ともに圧倒的な内容…

松尾大社 本殿と三神像

松尾大社の本殿が特別公開されたので見学してみました。 (京都古文化保存協会主催・2022年11月3日〜12月4日) 境内はフラフラと散策したことがありますが、回廊の中、本殿(重要文化財)そのものを観たことはありませんでした。 神職の方が見学者を数名単位でま…

パゾリーニ生誕100年 |ぴあフィルムフェスティバル 2022

ピエル・パオロ・パゾリーニ(Pier Paolo Pasolini 1922-1975)の生誕100年を記念し、今回の「ぴあフィルムフェステイバル2022」では彼の大規模特集が組まれました。 以下、雑感です。 pff.jp 2022年の今年はアンドレイ・タルコフスキーとフランソワ・トリュフ…

清浄華院の狩野永納「泣不動縁起絵巻」

京都御苑の東隣、寺町通に門を構える清浄華院には、二つの「泣不動縁起絵巻」が伝わっています。 この秋、京都古文化保存協会主催の特別公開(2022年11月18日〜27日)により、普段は京都国立博物館に寄託保管されているこの絵巻二本が同時に寺内で展示されまし…

泉涌寺 霊明殿

泉涌寺、境内の一番東側奥に建つこの寺の最重要施設「霊明殿」(れいめいでん/りょうみょうでん)は、普段、非公開となっています。 2022年11月6日〜26日、京都古文化保存協会の主催により特別公開されました。 隣接する本坊や庭園は比較的よく公開されていま…

蓮成院の菊池契月

大原にある蓮成院(れんじょういん)が特別公開されたので訪問してみました。 (京都古文化保存協会主催・公開は2022年11月12日〜30日) 滅多に公開されない寺院だと思います。 初見学でした。 小さいお寺なのですが、客殿の内部は京都画壇の名人たちによる襖絵…

松室重光 京都ハリストス正教会

京都古文化保存協会による特別公開事業の一環で、京都ハリストス正教会「生神女福音聖堂」の内部が公開されました(柳馬場二条・2022年11月8日〜18日)。 この建物は、ちょうど今年、2022年2月、国の重要文化財指定を受けています。 これまでにも古文化保存協…

滋賀県立美術館「石と植物」展

企画展 石と植物 ■2022年9月23日〜11月20日 ■滋賀県立美術館 自前の収蔵品を中心にどこまで面白い企画が組めるか。 滋賀県美のキュレーターたちが、楽しく頭の中で汗をかいた雰囲気が伝わってくるような、素晴らしい展覧会でした。 www.shigamuseum.jp 昨年6…

竹内栖鳳「徽宗の猫」と「省筆」

特別展 没後80年記念 竹内栖鳳 ■2022年10月6日〜12月4日■山種美術館 竹内栖鳳(1864-1942)が、今は無き湯河原の名宿「天野屋」の敷地内に建てた別荘で没してから今年で80年。 これを記念し、広尾の山種美術館では、同館自慢の栖鳳コレクションに加え、初公開…

カトリック河原町教会|京都モダン建築祭より

今年2022年11月11日から13日にかけて初めて開催された「京都モダン建築祭」。 「カトリック河原町教会」の内部が一般に公開されたので見学してみました。 2022.kenchikusai.jp 以前、この教会の北側には「京都ロイヤルホテル」が覆い被さるように隣接し、南…

大阪市立美術館 休館中の巡回コレクション展

美をつくし―大阪市立美術館コレクション ■2022年9月14日~11月13日■サントリー美術館 2026年に開館90周年を迎える大阪市立美術館。 記念イヤーを前に、老朽化した建物や館内設備などを修繕するため、今年の夏頃から3年程度の長期休館期間に入っています。 こ…

南禅寺 南陽院 木島櫻谷の襖絵と植治の庭

今年の9月、京都ローカルなニュースの中で、アート関連のちょっと面白いトピックスが報道されました。 南禅寺の塔頭、南陽院を飾る襖絵が木島櫻谷の筆によるものと特定、「再発見」されたという話題。 近年、櫻谷を積極的にとりあげている泉屋博古館による調…

今年のうちに石山寺。大河ドラマが始まる前に。

再来年、2024年の大河ドラマは紫式部が主人公だそうです。 大河ドラマ自体に興味はないのですが、すぐ、これは廬山寺と石山寺が大喜びしそうな題材だなあ、と思ったわけです。 京都御所の東に隣接する廬山寺は、紫式部が一時住んでいたと推定される場所の上…

東博150年展に関する長い雑感(やや批判系かも)

絶賛開催中の特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」(2022年10月18日〜12月11日)。 「凄い」とか「かつてない」、「奇跡的」という派手な形容詞がメディアを飛び交い、日時指定の予約チケットも早々に完売していくという大盛況です。 平日午後の遅い時間帯を…

今年の正倉院ペーパーナイフ

第74回 正倉院展 ■2022年10月29日〜11月14日■奈良国立博物館 今回の正倉院展、メインビジュアルに選ばれた宝物は「漆背金銀平脱八角鏡」でした。 昨年の華麗な「螺鈿紫檀阮咸」はもとより、例年の目玉出展品と比べても、やや地味な印象を受けますが、繊細さ…

マリオ・ブルネロ|2022.11.6 バロックザール

マリオ・ブルネロ 無伴奏チェロリサイタル ■2022年11月6日 14時開演■青山音楽記念館 バロックザール J.S.バッハ ・無伴奏ヴァイオリン パルティータ 第1番 ロ短調 BWV1002・無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調 BWV1011 ・無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調 BWV101…

中之島の「具体」大回顧展|国立国際美術館

すべて未知の世界へ ― GUTAI 分化と統合 ■2022年10⽉22⽇〜2023年1⽉9⽇■国立国際美術館 (大阪中之島美術館と共催) 今年、2022年は具体美術協会が解散してからちょうど50年。 国立国際美術館と大阪中之島美術館、渡辺橋駅前に隣り合う巨大なミュージアム2館…

祇園のアンディ・ウォーホル 1974年

原榮三郎が撮った京都 Warhol in Kyoto 1974 ■2022年9月17日〜2023年2月12日■ZENBI-鍵善良房-KAGIZEN ART MUSEUM 現在、京都市京セラ美術館で開催されている「アンディ・ウォーホル・キョウト」展と同期したミニ展覧会です。 京都市美展の企画も担当している…

「三井より徳川」だった大蒔絵展|三井記念美術館

大蒔絵展 ー 漆と金の千年物語 ■2022年10月1日〜11月13日■三井記念美術館 平安時代から平成時代まで。 文字通り大名品の数々で蒔絵1000年の歴史を一気に大観してしまうという、ジャパニーズ・ラグジュアリー工芸特別展です。 眼が満腹になるような素晴らしい…

中信美術館の「八木明」展

八木明 ―磁の流れ― ■2022年10月5日~11月25日■中信美術館 中信美術館の1,2階はもとより、エントランスから茶室の中まで、隈なく作品で満たした本格的な個展でした。 祖父である八木一艸、父、八木一夫の作品のみならず、母、高木敏子のファイバーアートまで…

静嘉堂文庫 二重橋前の「ギャラリー」

静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念展Ⅰ響きあう名宝 ―曜変・琳派のかがやき― ■2022年10月1日〜12月18日■静嘉堂@丸の内 第一印象は、「あれ、これだけ?」、でした。 世田谷岡本にある静嘉堂文庫美術館が、開館から30年とさほど長くない期間をもって公開施設…