大師湯の快適新鮮源泉|長野県・別所温泉

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 年に一度は入りたくなる温泉があって、別所温泉の大師湯もその中の一つです。

今年もなんとか湯浴みすることができました。

 

「大師湯」「大湯」「石湯」と別所温泉には三つの共同浴場があります。

すべて入ったことがありますが、大師湯は中でも特級の湯質を示す格別な風呂です。

源泉名は「3号源泉」。

別所温泉には何本か源泉があるようですが、私が浴びたことがあるのはこの3号と4号のみ。

3号の温度は44.0℃

一方、4号は50.6℃

6度あまり3号の方が低い。

この差がとても大きいのです。

大師湯に注がれている3号源泉は湯船では42℃ほどに下がります。

つまり、源泉そのままで加水も加温も必要なく、実に快適な泉温が実現してしまうのです。

豪快に放物線を描いて黒い球形の湯口からほと走る湯。

3,4人入れば一杯という小型の浴槽に勢い良く注がれていますが、激熱化することはなく、鮮度が保たれています。

奇跡のように圧倒的魅力をもった風呂です。

4号源泉がこの勢いで投入された場合、熱くて入れないでしょう。

温泉分析表では「アルカリ性単純硫黄温泉」と分類されています。

硫黄成分はさほど濃くはなく、ほんのりと香るレベル。

そこがなんとも上品なのです。

鮮度が高いので白濁はみられません。

浴槽の縁からどしどしあふれていくその光景をみるだけで嬉しくなってしまいます。

 

カランから噴出する湯も源泉です。

これほど贅沢な上がり湯もなかなかありません。

150円(2020年11月現在)。

券売機で紙の小片を入手し、番台に座っている方に渡します。

このスタイルは値段も含めて初めて入った時からまったく変わっていません。

朝6時から営業。

午後遅くなってからようやく開く伊東辺りの共同浴場と違って使い勝手が良いところも魅力です。

 

朝の一番風呂は地元の旦那衆等が入ると思われるので遠慮し、たいてい午前10時すぎ頃に入りますが、ちょうど常連さんと入れ替わりになるタイミングみたいで、いつも貸切に近い状態(週末・休日は入ったことがないので分かりませんが)。

 

「大師」で温泉といえば、普通、弘法大師空海ですが、この温泉の大師は「慈覚大師」。

第三代天台座主、円仁のことです。

大師湯近くの北向観音を円仁が創建した時、この湯を好んだとの由緒をもちます。

 

さて上田電鉄別所線は2019年の台風19号により千曲川にかかる鉄橋が崩落。

別所温泉ファンとしては大ショックでした。

2020年11月下旬現在、まだ復旧されていません。

赤い鉄橋自体は姿を現しているので工事は進捗しているようです。

上田駅から一つ先の城下駅まで臨時のバスが出ていて、城下駅から電車に乗り換えなければなりませんが、スムーズに乗り継ぎできるので大きな不便は感じません。

企業財政は厳しいと思いますが、一日も早い復旧を祈っています。

 

なお11月下旬現在、大師湯ではコロナ対策のため番台で氏名と連絡先等の記入を求められます。

一時営業を停止していたようですが、健在で安堵しました。

 

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www.bessho-spa.jp

岡山県立博物館の出張展覧会|龍谷ミュージアム

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企画展「ほとけと神々大集合 岡山・宗教美術の名宝」

■2020年11月21日〜2021年1月24日
龍谷ミュージアム

 

岡山県立博物館は1971(昭和46)年の開館からまもなく50周年を迎えます。

収蔵品の増加で余裕がなくなってきたことや建物の老朽化対策もあって、現在修復のため長期休館期間に入っています。

工事が終わるまでの間、収蔵品の一部を龍谷ミュージアムに預かってもらうことになり、今回の企画展につながったのだそうです。

www.pref.okayama.jp

 

3階の展示室を使い30数点、平安から江戸時代まで、仏像、神像、絵巻に曼荼羅と多様な品々が披露されています。

ほとんどが岡山県内の神社仏閣に由緒を持つ文化財で占められていて、京都ではなかなか目にする機会がない文化財ばかり。

内容は大きく前後半に分かれ、前半では岡山に特に多いと言われる真言密教系寺院の仏教美術、後半では神社にまつわる展示物がまとめられています。

 

タイトルだけみるとまるで「神仏習合特集展」のように思えますが、特に図像学等を意識してまとめられているわけではありません。

 

鮮やかに彩色が残った両界曼陀羅図等、仏教美術も見応えがありますが、特に面白かったのは「神々」の方です。

吉備津神社の神官の家に伝わったという木造「女神坐像」二躯。

小さな像ですが、どこにも鋭角的なラインがみられない、その丸みを帯びた形はかなり抽象性をも帯びていて平安後期の作なのにどことなくモダン民芸的な印象すら受けます。

元来「かたち」を持たなかった日本の神々が、仏像に出会うことで神像として出現したわけですが、単純に人のかたちに似せて造形するのを畏れたのか、どこかプリミティブな雰囲気を残そうとしているかのようです。

初期の神像というと、松尾大社の神像等が特に有名ですが、吉備津神社由来の二神像はそれらとも違い、不思議に優しい造形で魅了されました。

 

他方、真庭市の宇南寺に伝わる木造「男神坐像」は体に真言が記された異形の神。

やや顎がしゃくれた独特の表情が面白く、抽象性がみられる先の女神に比べ、こちらはまるで誰かをモデルにしたかのようにキャラクターづくりがはっきりしています。

同じく平安時代の作。

 

takano-jinjya.or.jp

津山にある高野神社は美作国二宮としての格式を誇り、銅製の文字が貼られた「扁額」は平安時代から伝えられるもの。

丸みを帯びたデザイン性の高い書体が特徴です。

三蹟の一人、藤原行成筆とも伝えられますが、学術的な裏付けはとれていない模様。

同じ高野神社の木造「獅子」一対も平安時代の作。

これも「丸み」が特徴で、いかめしさがほとんど感じられません。

どこか愛らしい雰囲気すら漂う彫刻です。

 

龍谷ミュージアムは11月下旬現在、オンラインによる事前予約が必要です。

企画自体面白く、閉館中の博物館展示物の公開をも担う有意義な展覧会です。

なお、前後期と入れ替えがあり、後期は12月22日からです。

 

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museum.ryukoku.ac.jp