企画展「ほとけと神々大集合 岡山・宗教美術の名宝」
■2020年11月21日〜2021年1月24日
■龍谷ミュージアム
岡山県立博物館は1971(昭和46)年の開館からまもなく50周年を迎えます。
収蔵品の増加で余裕がなくなってきたことや建物の老朽化対策もあって、現在修復のため長期休館期間に入っています。
工事が終わるまでの間、収蔵品の一部を龍谷ミュージアムに預かってもらうことになり、今回の企画展につながったのだそうです。
3階の展示室を使い30数点、平安から江戸時代まで、仏像、神像、絵巻に曼荼羅と多様な品々が披露されています。
ほとんどが岡山県内の神社仏閣に由緒を持つ文化財で占められていて、京都ではなかなか目にする機会がない文化財ばかり。
内容は大きく前後半に分かれ、前半では岡山に特に多いと言われる真言密教系寺院の仏教美術、後半では神社にまつわる展示物がまとめられています。
タイトルだけみるとまるで「神仏習合特集展」のように思えますが、特に図像学等を意識してまとめられているわけではありません。
鮮やかに彩色が残った両界曼陀羅図等、仏教美術も見応えがありますが、特に面白かったのは「神々」の方です。
吉備津神社の神官の家に伝わったという木造「女神坐像」二躯。
小さな像ですが、どこにも鋭角的なラインがみられない、その丸みを帯びた形はかなり抽象性をも帯びていて平安後期の作なのにどことなくモダン民芸的な印象すら受けます。
元来「かたち」を持たなかった日本の神々が、仏像に出会うことで神像として出現したわけですが、単純に人のかたちに似せて造形するのを畏れたのか、どこかプリミティブな雰囲気を残そうとしているかのようです。
初期の神像というと、松尾大社の神像等が特に有名ですが、吉備津神社由来の二神像はそれらとも違い、不思議に優しい造形で魅了されました。
他方、真庭市の宇南寺に伝わる木造「男神坐像」は体に真言が記された異形の神。
やや顎がしゃくれた独特の表情が面白く、抽象性がみられる先の女神に比べ、こちらはまるで誰かをモデルにしたかのようにキャラクターづくりがはっきりしています。
同じく平安時代の作。
津山にある高野神社は美作国二宮としての格式を誇り、銅製の文字が貼られた「扁額」は平安時代から伝えられるもの。
丸みを帯びたデザイン性の高い書体が特徴です。
三蹟の一人、藤原行成筆とも伝えられますが、学術的な裏付けはとれていない模様。
同じ高野神社の木造「獅子」一対も平安時代の作。
これも「丸み」が特徴で、いかめしさがほとんど感じられません。
どこか愛らしい雰囲気すら漂う彫刻です。
龍谷ミュージアムは11月下旬現在、オンラインによる事前予約が必要です。
企画自体面白く、閉館中の博物館展示物の公開をも担う有意義な展覧会です。
なお、前後期と入れ替えがあり、後期は12月22日からです。