上林ホテル仙壽閣の「湯壁」|長野県・上林温泉

 

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湯口ではなく「湯壁」。

とんでもない量の源泉を活かした大浴場の設えに驚きます。

安定感のあるサービスも魅力の温泉ホテルです。

www.senjukaku.com

 

予め電話しておけば湯田中駅まで送迎車が来てくれます。
場所としては立派に秘湯エリアの上林温泉ですが、長野駅までたどり着けばアクセスは意外に簡単。
ローカルバスでも最寄りまで行くことができます。
ただバス停から急な坂を登ったりするので雪の時季などは送迎を使った方が良いと思います。

長野電鉄系の会社が運営する温泉宿。
よく教育を受けているとみられるスタッフが出迎えてくれます。
チェックインからアウトまで一定の品質でサービスが受けられる宿として湯田中渋温泉郷近辺では重宝な存在です。

いろいろと温泉旅館に泊まっていると、中にはクセのある個人経営宿や勘違いな仲井さんに遭遇し気分が悪くなることがあります。
大量のカメムシなども、もちろん、とても困ります。
そういうことを含めて旅の醍醐味であると豪語する人もいますが、私はとにかく苦手なのです。
できれば余計な他人とは関わらず、清潔、かつ、しっかりした設備の宿でじっくり温泉だけと戯れたいと願っている世捨て人系の旅行者です。
その点、秘湯エリアにありながら、仙壽閣のようにいついっても安定した品質が約束された宿があると本当に助かります。

有料の貸切風呂もありますが、ここは大浴場の内風呂のみで大満足。
ずっとここに入り浸ることになります。
長方形のごく普通の浴槽なのですが、驚くのはその温泉投入方法です。
一辺の壁、その上部が全て湯口なのです。
一面の壁からザーザーと飛沫をあげて源泉が流れ落ちます。
壮観です。
あまりの湯量に最初は循環しているのではないかと疑ったほど。
どこにも循環用の吸入口はありません。
壁を落下した温泉は全て浴槽から絶え間なくどんどん溢れていきます。
見ているだけてニヤけてしまう「湯壁」の快楽。
この宿でしか味わえません。

温泉は長野電鉄株式会社が単独保有する自家源泉。
「(新湯)」と温泉分析表にわざわざ記載がありますから、古くから知られる近くの地獄谷温泉とは、湧出地は同一エリアにあるものの、別個の源泉とみられます。
毎分約700リットル。
一つの宿だけで使用する量としては並外れています。
65.6度、pH6.9のナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉。無色透明ですがほんのりとゴム系の香り。
小さく湯花も舞っています。

ただ、惜しいのは加水比率でしょうか。
適温化と湯壁からの量を両立させるためか、やや多めに水が加えられていると感じます。
また清掃時に塩素系薬剤を使っているとみられ、あの独特の匂いが鼻をつくことがあります。
これはタイミング次第でしょうけれど。

とはいえ、浴槽の湯はあっという間に入れ替わる鮮度が確保されいます。
源泉100%にこだわり湯量を絞りすぎて激熱化するより遥かに素晴らしい扱いと言えます。
普通に湯口から高温の源泉が注がれている併設の露天よりも圧倒的に内風呂の方が鮮度は高いと思います。

食事も安定した品質が維持されています。
特にこだわりの皿が出てくるわけではなく万人受けする内容。
季節感を大事にしつつ地元の食材を適宜取り入れた会席コースです。
凌ぎに蕎麦。
信州をしっかり感じさせてくれます。
朝食は野菜たっぷりのサラダがうれしいこなれた献立が供されます。

上林温泉ではお隣の塵表閣も素晴らしく、いつも湯田中・渋エリアだとどちらにしようか迷います。
塵表閣はクラシカルな湯船やこだわりの野菜料理などがユニークなのですが、とにかく怠けた安定の旅を求めると仙壽閣を選んでしまいます。
平日一人泊で2万円台後半はみておく必要があると思います。
広々とした部屋を含め、割高な感じを受けたことはありません。

ただ、仙壽閣と塵表閣の間にそびえるリゾートマンションと思われるビル。
あれはなんとかならなかったのかなあといつも思います。
露天の開放感を台無しにして余りある建造物で、周囲からも浮いています。
仙壽閣では露天にあまり入らないので私としての実害は少ないのですが、塵表閣側では甚大な入浴上の景観妨害を受けています。

以上愚痴的余談でした。

 

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