草円 (岐阜県 奥飛騨温泉郷・福地温泉)

 

 

名宿が連なる奥飛騨福地温泉。中でも「草円」は極上の「ぬる湯貸切風呂」の魅力にはまってしまい、ここ数年、リピートしている温泉宿です。

 

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首都圏からも京阪神からも、なかなかにアクセスが大変な奥飛騨。酒飲みの私は車を運転しないのでさらに困ったことになります。いろいろ試した結果、最も楽なコースはバスタ新宿からのバス旅ではないかとの結論に至りました。現在コロナの影響で減便されているようですが、濃飛バスが、がんばっています。

4時間以上かかるものの、中央高速経由、新宿から平湯温泉バスターミナルまで乗り換えなしに一本で到着。車中で飲んで眠っていれば勝手に秘湯の地まで運んでくれるのですから、これを使わない手はありません。

福地温泉には平湯温泉バスターミナルからさらに新穂高ロープウェイ行のローカルバスに乗り換え15分ほど。時刻によっては乗り換えの待ち時間がややかかります。

「山里のいおり 草円」には「福地ゆりみ坂」バス停で下車、「湯元 長座」のちょうど向かい側の路地に入って2,3分で到着します。アクセスに問題はありません。

 

福地温泉の名を一気に高めた「長座」に比べると比較的新しい宿。広い敷地に古民家風の建物を連ねた雰囲気はいかにも奥飛騨らしい風情。普段はお茶でチェックイン時のもてなしがありますが、今年はコロナで取りやめ中。一刻も早く風呂に入りたい身としては省略してもらいたかったこともあり、これはむしろ歓迎です。ここに限らず他の宿もこれを機会にチェックイン後のお茶タイムは廃止してもらいたいくらいです。

 

たくさん風呂があります。

男女別の大浴場は宿泊棟から少し離れたところにあり、ウッディーで格調高い湯屋。モダンな方形の浴槽。山々の緑が眼前に迫る半露天で、浴室全体のセンスも素晴らしい。湯口には升が置かれています。飲泉ができるほど新鮮な源泉が注がれています。もちろん掛け流し。

浴槽の近くに「蒸し風呂」を併設。高温泉を利用したサウナで結構暑い。

さらに離れた川の近くに「森の湯」と名付けられた露天が二つ。野趣満点。中でも木製の丸いテーブルのような仕掛けが設置されている露天はゆっくり寛げます。こちらはかなり熱目の温度設定です。なお川が増水していると入浴不可となります。

 

以上、いずれも魅力的な草円のパブリック風呂ですが、実は、私、もうほとんど入らないのです。

この宿にはさらに別の離れ湯屋があり、三つの貸切風呂が用意されています。

これが超絶に素晴らしいのです。だから他の風呂に入っている暇がない。

 

大きさが異なりますが、三つの貸切浴室それぞれに内風呂と露天が備えられています。中でも内風呂が特級のクオリティを示します。

35度と44度の源泉が二つのエリアに区切られて注がれています。区切られてはいるものの、じんわりそれぞれの浴槽からの湯が混じり合い、いずれのエリアもぬる目、やや熱めの適温が維持される仕組み。

貸切内風呂に投入されているのは「水ワケの湯」と銘々された自家源泉。温泉分析表によれば、41.3度、pH7.5の単純温泉福地温泉共有源泉もこの宿には引かれていますがこちらは70度以上の高温。全く別の源泉です。

いわゆる不感温度、つまり体温とほぼ同じ湯温が成立している湯船です。軽妙な単純温泉ということもあり、全くストレスを感じません。永久に浸っていられるような快楽を得られます。貸切なのであまり長湯をしすぎると迷惑がかかりますが、深夜・早朝なら誰も入ってこないので、超長湯体験を繰り返すことになります。

風呂の設えセンスも抜群。玉砂利が敷かれた床に浴槽の縁から絶え間なく大量の湯が溢れていきます。こちらも湯口から飲泉が可能。ほんのりと特有の香りが感得され、温泉自体に気品があります。

一方、貸切の露天は福地温泉共有源泉が投入されていてこちらは激熱系(今年9月に投宿した時は故障があり、ぬる湯を投入していましたが)。

 

ということで、ここしばらく、草円ではこの貸切内風呂にのみ、入り浸ることにしています。これはクセになってしまっているので毎年欠かせない。困ったことです。

 

食事は囲炉裏が切られた専用の食事処で供されます。

奥飛騨方式といってもいいコース。囲炉裏には鮎や五平餅が刺され、山や川の食材を活かした小皿が次々と運ばれてきます。いずれも田舎料理のレベルを超えたもので、十分美味しい。飛騨牛も当然に加わります。

朝食はこれまた奥飛騨名物の朴葉味噌を焼きながらの膳に、つきたての餅まで出てきます。さらに昼飯用としておむすびが二個、笹に包まれてプレゼント。

やや食べきることに苦労する量ですが、長湯三昧の後には不思議と腹におさまってくれます。

 

部屋は太い梁が天井を支える古民家材を活かした造り。広々としています。寝具がチェックイン前、すでに整えられていますから、風呂上りにいきなり寝っ転がりながら、三重の鉢に用意されたお茶請けをつまみつつのビール三昧。心底怠惰な気分を味わえます。

 

「長座」や「かつら木の郷」ほど高くなく、一人泊も可能で、平日2万円台。ぬる湯については平湯に近い「藤屋」も素晴らしいのですが、貸切三昧の不感温度浴ができるところはここ以外に知らないので、福地温泉周辺ではもうこの宿限定となってしまいました。

 

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草円 貸切風呂湯口