「新聞人のまなざし 上野有竹と日中絵画の名品」(京都国立博物館)

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仏教美術研究上野記念財団設立50周年記念 
特別企画 「新聞人のまなざし 上野有竹と日中絵画の名品」
 ■2021年2月2日〜3月7日
 ■京都国立博物館

 

朝日新聞社の実質的な基礎を村山龍平と共に固めた上野理一(有竹)。その収集品を回顧する特別企画。平成知新館の2階で展示されています。なお3階と1階は常設展示です。

数寄者であった村山龍平のコレクションが香雪美術館にまとめられているのに対し、盟友上野理一の収集した美術品の多くは、1960年、息子上野精一が京博に寄贈。「上野コレクション」として知られています。

この寄贈から50周年を記念した企画展が今から10年前、2011年1月から2月にかけて同じ京博で開かれています。朝日新聞社との共催(この企画展は観ていません)。

今回の特別展示は、上野コレクション寄贈とは別に、1970年、上野家が国宝「山越阿弥陀図」を国(京博)に売却した資金で誕生した「仏教美術研究上野記念財団」の設立50周年を記念したもの。2011年のコレクション寄贈50周年企画展で展示された作品の多くを再度まとめて披露しているようです。本来は昨年2020年に予定されていましたが、コロナで延期されていた企画。

その「山越阿弥陀図」は鎌倉時代の作。京博には同類の傑作として知恩院の「早来迎」や金戒光明寺「山越阿弥陀」が寄託されています。上野理一が所持していた「山越阿弥陀図」は金戒光明寺のそれと同様、阿弥陀仏の手などに欠損があることから瀕死の人と極楽を結ぶ五色の糸が実際に結びつけられていた可能性が高いとか。「早来迎」ほどのダイナミックさはありませんが、金戒光明寺の図よりは動きが画面からみてとれます。

 

仏師運慶発願によって書写された国宝「法華経巻第八」(運慶願経)。その軸木に、平重衡の南都攻めによって焼け落ちた東大寺の残木を使うというなかなかに重苦しい設えですが、文字自体はとても清らか。平安時代の典雅さとは違う清楚な気品が感得されます。

 

上野記念財団のHPによれば、上野理一が中国書画に目覚めた理由に内藤湖南(朝日新聞記者から京大教授へ転身)からの助言があったのだそうです。湖南はこれまで日本に伝わってきた中国書画が「正統派ではない」と指摘。おりしも辛亥革命の混乱で中国から流出しはじめた「正統派」の書画を積極的に上野は集めていくことになります。
その代表例が王羲之「宋拓十七帖」。上野コレクションを代表する名品とされています。

およそ宋から清までの中国書画の名品がゆったりと展示されています。いわれてみれば内藤湖南がいう「正統派」の格調高さが際立つ名品揃い。
しかし、極端な比較例かもしれませんが、明末清初の遺民画家を好んで収集した住友寛一の「まなざし」などと比べるとどこか面白みに欠けるようにも感じてしまう。泉屋博古館が蔵する寛一コレクションにみる書画には正統派を踏み越えた個性がどの作品にも漂っています。上野有竹斎のそれには正統派の品格はあるものの、それ以上のコレクターとしての「クセ」を感じさせる要素がやや弱いようにも感じられるのです。

「新聞人のまなざし」というこの特別展示のタイトルを見ると、ジャーナリスティックな思想に裏打ちされた作品が集められたかのように思えてしまいますが、そこまで関係はないようにも思えます。

ただ、上野理一は村山龍平と共に、日本伝統美術復興を強力に推進した岡倉天心の美術誌『国華』の発行を助けた人物でもあり、実質的な朝日新聞創業者二人の審美眼がどこに焦点を合わせていたのか、香雪美術館のそれとも比較想像しながら鑑賞すると面白いかもしれません。

 

2月初旬現在、京都国立博物館常設展は事前予約不要で鑑賞可能。体温チェックがあるのみです。

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