「我々の見たこともない幻想の幻とはこの素晴らしさである」展 (草間彌生美術館)

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「我々の見たこともない幻想の幻とはこの素晴らしさである」展

 ■2020年7月30日〜2021年3月29日

 ■YOYOI KUSAMA MUSEUM

 

草間彌生は信州松本生まれの人ですが、長く新宿区原町に住んでいるらしく、同区から名誉区民として顕彰されています。この個人美術館は2017年の開館。外苑東通り沿いの弁天町に、純白の塔として、ちょうど彼女の地元、原町の住宅街を見下ろすように建てられています。初めて訪問してみました。

東京メトロなら東西線の神楽坂か早稲田、都営地下鉄だと大江戸線牛込柳町駅が近場の駅ということになりますが、どの駅からもやや歩く必要があります。都営バスであれば「牛込保険センター前」バス停がちょうど目の前にあります。

 

コロナ流行の前からここは日時指定の事前予約制。ネットで1100円の入場料を決済した後、入場券代わりのQRコードがメールで送られてくる仕組み。春からしばらく休館していましたが、復活。9月19日放送の「新・美の巨人たち」(テレビ東京)でとり上げられると知り、放映後は予約が取りにくくなるのではないかと見越して、慌てて先週確保(その後、実際取りにくくなったのかは不明です)。チケットが取れてしまえば入場者数は限られるのでゆったり観賞することができます。16時入場のコマが最終。遅い時間の方が人が少ない傾向にあるようです。

作品数が多いわけでもないのに1千円の入場料をとるのはやや割高な感じを受けます。しかし入場者数を制限しつつ、5つのフロアそれぞれに監視員をつけての個人運営では止むを得ない設定かもしれません。

 

水玉の人、といわれますが、私の印象は「芋虫の人」。ブニョブニョした勾玉のような、あるいは太った精虫のごとき群れが生理的に訴えかけてくる70年代あたりの作品に惹かれてきました。造形がポップで規則的なミニマル感が強くなった近作には興味を持てずじまい。しかし、今回3階展示室にまとめて架けられた、1メートル四方のアクリル板による最近作群には「虫」のイメージが自由自在に噴出。原色の悪夢のようです。ただ以前よりも生理的執拗さは後退していてどこか軽やかさを持っているようにも感じます。

 

同じ3階に「無限の鏡の間-宇宙の彼方から呼びかけてくる人類の幸福への願い」というインスタレーションがあります。全て鏡で囲まれた密室に無数の光源が仕掛けられ、2分間に設定された観賞滞在時間中、無重力の世界に陥ったような錯覚を覚えます。

4階は「フラワー・オブセッション」と名付けられた部屋。花柄のステッカーを入場者が一輪、好きな場所に貼り付けていき、日に日にどんどん増殖させていくという仕組み。これから花に埋め尽くされ、不気味に変化していく部屋ですが、9月下旬現在、まだ草間的強迫観念の凄みは現れていないレベルです。会期終わりの来年春にはどうなっているのか。それを想像することはまさに「見たことのない幻影」で、展覧会のテーマに一致します。

結局一番惹かれたのは最初の方に展示されている、執拗な芋虫集合造形テイストが色濃く残った「無限の宇宙」(2014)の一枚でした。

 

最上階はミニライブラリーと展望デッキ風の空間。眼下に近くの漱石記念館や、区立早稲田小学校の赤茶色っぽい校舎が見えます。草間彌生美術館はこのあたりでは一番高い建築物の一つですが、西の新宿副都心方向を見るとグンと高く土地が迫り上がっている様に見えます。このビルは外苑東通りよりもさらに低い谷底の土地から生えているのでした。

 

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