きらめく美 北陸ゆかりの截金作家たち
■2020年11月19日〜12月20日
■石川県立美術館
「截金」は「きりかね」と読みます。
キリガネと濁る発音を拒否してきたかのようです。
繊細美を尽くすこの工芸装飾技法は言葉の響きにおいても決然としています。
西出大三、高瀬孝信、山本茜。
三人の截金作家たちが石川県立美術館で特集されています。
本格的な企画展ではなく、常設展の一部に組み込まれている特別陳列です(第5展示室)。
石川県立美術館が蔵する西出作品に加え、富山の砺波市美術館から高瀬の作品を借り受け。
山本の作品はほとんどが個人所蔵のものです。
西出大三は1913(大正2)年加賀市の生まれ。
はじめは高村光雲に憧れて木彫の道を進んだそうですが、東京美術学校在学中、古美術修復を経験するうちに截金の世界へ。
1985(昭和60)年、この分野での重要無形文化財保持者に認定されています。
その10年後、亡くなっています。
截金彩色八花香盤「御法(みのり)」はこの工芸技法が仏教美術から生まれたものであることを60歳をすぎた作者があらためて自らに問い直したような美の結晶。
平安の優美さを昭和に再現した傑作だと思います。
他方、西本願寺系の截金仏師であった高瀬孝信の作品は截金本来の様式を守る姿勢が明確です。
1932(昭和6)年、堺の生まれ。
戦時中富山に住んでいたことから砺波市美術館にまとまったコレクションがあるようです。
2001(平成13)年に亡くなりました。
独特の幾何学文様で彩られた截金飾箱「花の城郭」に目を奪われました。
とても煌びやかな作品。
でも全体としては折り目正しさが優先されているので単なる豪華さよりも、仏間を荘厳するかのような静かな佇まいを感じさせます。
三人の中で唯一現役の山本茜は1977(昭和52)年、金沢の生まれ。
今年、パナソニック汐留美術館で開催された「和巧絶佳」展で、若手中堅工芸家の一人として紹介された際、はじめてまとめて作品に接する機会を得ました。
透明度の高いガラス工芸と截金が糾合された作品はいずれも息をのむような美をあらわしています。
中にはどこか通俗の世界と紙一重のような部分を感じる作品もあるのですが、截金自体が伝統のかたちを守っているので、全体としての気品が失われていません。
截金の名人たち、三者三様に独自の美を創造しています。
規模の小さい特別展示ではあるものの、内容は濃密で、とても楽しめました。
それにしても汐留の「和巧絶佳」展は山本茜をはじめ、これからの工芸界を牽引していきそうな粒揃いの作家たちが紹介されていて、貴重な企画展だったと思います。
うれしいことに来年はアサヒビール大山崎山荘美術館に巡回してくるのでふたたび鑑賞できそう。