2022-01-01から1年間の記事一覧

川崎正蔵と松方幸次郎の「美術館」

神戸市立博物館開館40周年記念特別展 よみがえる川崎美術館―川崎正蔵が守り伝えた美への招待― ■2022年10月15日~12月4日 とても周到に準備された、神戸市立博物館渾身の単館企画展です。 タイトルに誇張はありません。 本当にありし日の「川崎美術館」の一室…

ミーシャ・ラインカウフの暗渠

ミーシャ・ラインカウフ 「Encounter the Spatial — 空間への漂流」 ■2022年10月1日〜23日 ■京都芸術センター 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2022」に関連した展示企画です。 ミーシャ・ラインカウフ(Mischa Leinkauf 1977-)による映像2作品が、京…

ルートヴィヒ美術館の写真コレクション

ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション ■2022年10月14日〜2023年1月22日■京都国立近代美術館 先日まで国立新美術館で開催されていたルートヴィヒ美術館展。 京近美に巡回してきました。 大型のモダンアートがあるためか、3…

利休生誕500年展、ではない京博「茶の湯」展

特別展 京に生きる文化 茶の湯 ■2022年10月8日〜12月4日■京都国立博物館 今年2022年は千利休(1522-1591)生誕500年というキリの良いアニバーサリーイヤー。 各地でこれに因んだ企画が開催されています。 京博の「茶の湯」展もてっきり利休に関連した企画と勝…

仲谷昇の「スクリーン・テスト」|ウォーホル展から

アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO ■2022年9月17日~2023年2月12日■京都市京セラ美術館 (東山キューブ) 9月中旬から岡崎ではじまったウォーホル展。 盛況です。 kyotocity-kyocera.museum 平日の午前中に訪れてみました。 小型作品の前に…

藤田美術館の塔と快慶仏

藤田美術館の「塔」といえば、一般的にこの美術館のシンボルでもある庭園の多宝塔ということになるわけですが、実は収蔵品の中にもう一つ、素晴らしい塔があります。 「両部大経感得図」二幅のうちの一枚、「善無畏」に描かれた五重塔「金粟王塔」がそれ。 …

野田弘志の「湿度」

特別展「野田弘志 真理のリアリズム」 ■2022年9月17日〜11月6日■奈良県立美術館 「リアリズム」に「超」をつけると、「シュルレアリスム」になるし、「ハイパー・リアリズム」にもなります。 周知の通り、野田弘志(1936-)は写実主義の画家、リアリズムの人と…

六波羅蜜寺の新宝物館

今年、2022年5月22日、予定通り六波羅蜜寺の新しい寺宝館である「令和館」がオープンしています。初めて入館してみました。 見やすくなった面もたしかにありますが、以前の宝物館の方が彫像との独特の「近さ」があったので、新館への収蔵によって整えられて…

「バビ・ヤール」 |セルゲイ・ロズニツァ監督

セルゲイ・ロズニツァ( Sergei Loznitsa 1964-)が監督した「バビ・ヤール」(Babi Yar.Context, 2021)が、シアター・イメージフォーラム他、各地のミニシアターで上映されています。 www.imageforum.co.jp 古いアーカイヴ映像に強烈なサウンドトラックを施し…

スイス・タイポグラフィーの現在|京都dddギャラリー

京都dddギャラリー第233回企画展FormSWISS(フォーム・スイス) ■2022年10月05日~11月20日 デザインスタジオ「&Form」を率いる丸山新が企画プロデュースした、現代スイスのビジュアルコミュニケーションデザイン展です(無料)。 2020年秋に千駄ヶ谷のTHINK O…

ベルチャ弦楽四重奏団|2022.10.8 兵庫県立芸術文化センター

ベルチャ弦楽四重奏団 ■2022年10月8日 14時開演■兵庫県立芸術文化センター(小ホール) ハイドン: 弦楽四重奏曲 第32番 ハ長調 op.20-2,Hob.Ⅲ-32ショスタコーヴィチ: 弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 op.110 ベートーヴェン: 弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 op.59-1「ラ…

クルーゾーの「地獄」|ロミー・シュナイダー映画祭

今年2022年はロミー・シュナイダー(Romy Schneider 1938-1982)没後40年。 この大女優を特集した映画祭がBunkamuraル・シネマを皮切りに各地のミニシアターで開かれています。 romyfilmfes.jp 6本中、2作品が日本劇場初公開。 その内の一本、「地獄」は2009年…

フィン・ユールの椅子: 織田コレクションより

フィン・ユールとデンマークの椅子 ■2022年7月23日~10月9日■東京都美術館 今年の夏、ほぼ同時期に、都立の美術館2館が揃って「椅子」を特集しています。 まず東京都現代美術館のジャン・プルーヴェ展を鑑賞。 続いて上野でのフィン・ユール&デンマーク椅子…

片岡安 仁和寺 霊宝館

秋季特別企画展学校法人常翔学園創立100周年・仁和寺霊宝館開館95周年 記念事業仁和寺霊宝館 秋季名宝展 ■2022年9月17日〜12月4日 秋の仁和寺名宝展がいつものように始まりましたが、今回は少し毛色の変わった企画が組まれています。 展示の前半は国宝の文書…

ジャン・プルーヴェ展の東西

ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで■2022年7月16日〜10月16日■東京都現代美術館 Rester Jean Prouvé■2022年7月17日〜10月16日■node hotel 規模はまったく違いますが、東京と京都でジャン・プルーヴェ(1901-1984)の回顧展が3ヶ月にわたって開催されました…

仁和寺 金堂内部 香取秀真の梵鐘

京都市観光協会の主催により、普段非公開の仁和寺金堂および御影堂の内部が公開されました(「京の夏の旅」2022年7月9日〜9月30日)。 ninnaji.jp 境内の北辺に位置する金堂は、1613(慶長18)年に建造された内裏の紫宸殿を寛永年間(1624〜1643)に移築したものと…

ル・シダネルとマルタン 二人のアンリ

美術館「えき」KYOTO開館25周年記念 シダネルとマルタン展 最後の印象派 ■2022年9月10日〜11月6日■美術館「えき」KYOTO ちょうど昨年の9月、ひろしま美術館からスタートしたアンリ・ル・シダネルとアンリ・マルタンの特集企画展。 山梨、東京、鹿児島を経て…

ボストン美術館の探幽・山雪・増山雪斎

ボストン美術館展 芸術×力 ■2022年7月23日〜10月2日■東京都美術館 もともと2020年に開催される予定だったボストン美術館名品展。 コロナで中止の憂き目にあったものの、都美術館とおそらく読売新聞&日テレによる執念ともいえるプロデュースの力で今年リベン…

板谷波山の香炉

特別展 生誕150年記念 板谷波山の陶芸 -近代陶芸の巨匠、その麗しき作品と生涯- ■2022年9月3日~10月23日■泉屋博古館 板谷波山(1872-1963)生誕150年の今年、彼の故郷、茨城県筑西市での3館共同展(しもだて美術館・板谷波山記念館・廣澤美術館)を皮切りに、…

狩野山楽 二条城大広間四の間「松鷹図」

「松鷹 ~将軍の武勇を示す障壁画~」 ■2022年7月14日〜9月11日■二条城障壁画 展示収蔵館 2020年10月から11月にかけて東京国立博物館で開催された「桃山展」。 質量ともに圧倒的だった展示品群の最後を締め括っていたのが二条城から上野に運ばれた巨大な「松…

ウィーン幻想派の版画|京都市京セラ美術館

京都市京セラ美術館、今年2022年夏期コレクション展(7月16日〜9月25日)は「幻想の系譜―西洋版画コレクションと近代京都の洋画」と題され、夏らしく少し不気味にひんやりするテイストの作品が集められています。 kyotocity-kyocera.museum 北脇昇他、おなじみ…

金剛寺の聖剣と日月四季山水図屏風|「観心寺と金剛寺」展

特別展 河内長野の霊地 観心寺と金剛寺─真言密教と南朝の遺産─ ■2022年7月30日~9月11日■京都国立博物館 直線距離でいえば、河内長野は京都より奈良の方が当然に近いのですが、この地の二大寺院である檜尾山観心寺、天野山金剛寺ともに、京都国立博物館と親…

清水九兵衞=七代清水六兵衛 生誕100年

生誕100年 清水九兵衞/六兵衞 ■2022年7月30日〜9月25日■京都国立近代美術館 www.momak.go.jp 実にたくさんの名前をもっていた人物です。 1922(大正11)年5月15日、この人の生まれたての名前は塚本廣。 名古屋の人です。 1951(昭和26)年、六代清水六兵衞の養…

高島屋史料館の「世界三景」

特別展示 生誕150年 山元春挙と高島屋 ■2022年7月16日〜8月15日■高島屋史料館 www.takashimaya.co.jp 山元春挙(1872-1933)生誕150年の今年、すでに滋賀県立美術館が大規模な回顧展を開催しています(笠岡市立竹喬美術館・富山県水墨美術館へ巡回)。 同展でも…

アントワーヌ・ドワネルの音楽趣味|「二十歳の恋」

今年は、フランソワ・トリュフォー(1932-1984)生誕90年。 これを記念して各地のミニシアターで特集上映が開催されました。 movies.kadokawa.co.jp 「アントワーヌとコレット」(Antoine et Colette,1962)は、もともと「二十歳の恋」と題されたオムニバス映画…

「ノスフェラトゥ」|ヴェルナー・ヘルツォーク監督

先日、ヴェルナー・ヘルツォークの「ノスフェラトゥ」(Nosferatu The Vampyre,1979)を鑑賞しました。 以下、備忘録です。 joji.uplink.co.jp ムルナウ監督による無声映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922)のリメイクとして知られている作品。 夢にでも出てきそ…

三尾公三コレクション|京都国立近代美術館

京都国立近代美術館4階のコレクション展コーナーの一室で、三尾公三(1923-2000)のミニ特集が組まれています(2022年度第3回コレクション展 7月22日〜10月2日)。 三尾が、現在同館で特別展が開催されている清水九兵衛(1922-2006)と親交があったことにちなんで…

「囚われの女」の音楽|シャンタル・アケルマン監督

今回の「シャンタル・アケルマン映画祭」で公開された5本の中で、とりわけ音楽が印象的に使われていた作品が、「囚われの女」(La Captive, 2000)、です。 シャンタル・アケルマン Blu-ray BOX II(『囚われの女』Blu-ray、『オルメイヤーの阿房宮』Blu-ray、…

帝室技芸員たちによる明治美術の清華

特別展 綺羅きらめく京の明治美術ー世界が驚いた帝室技芸員の神業 ■2022年7月23日〜9月19日■京都市京セラ美術館 鶴首していた展覧会です。 もっぱら明治期に絞り、京都にゆかりをもつ帝室技芸員たち19人を特集する企画展。 全国各地から逸品を取り寄せていて…

エマニュエル・デ・ウィッテの幻想空間

現在、天王寺・大阪市立美術館に巡回中の「フェルメールと17世紀オランダ絵画」展(2022年7月16日〜9月25日)では、修復論争で話題の「窓辺で手紙を読む女」だけでなく、フェルメールと同時代を生きた画家たちによる優品の数々を堪能することができます。 www.…