2022-01-01から1年間の記事一覧

巨大画面で観たい「マルケータ・ラザロヴァー」

「マルケータ・ラザロヴァー」(Marketa Lazarová, 1967)が渋谷のシアター・イメージフォーラム他、各地のミニシアターで上映されています。 marketalazarovajp.com 約2時間45分、とにかく「ホンモノ」感が圧倒的なモノクロ超大作です。 監督はフランチシェ…

當麻曼荼羅と中将姫伝説|奈良国立博物館

貞享本當麻曼荼羅修理完成記念 特別展 中将姫と當麻曼荼羅 ―祈りが紡ぐ物語― ■2022年7月16日~8月28日■奈良国立博物館 (西新館) 圧倒的な情報量に頭がクラクラするような展覧会でした。 2018年から2020年にかけて実施された「貞享本 當麻曼荼羅」の修復作業…

「ラスキンの聖母」とエルスハイマーの「聖ステパノ」

スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち ■2022年7月16日〜9月25日■神戸市立博物館 greats2022.jp 先日まで東京都美術館で開催されていたスコットランド国立美術館展が神戸に巡回してきました。 全89点。 上野では93点でした。 以下の4作品が巡回…

アケルマンとディエルマンのモダニズム

「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」(Jeanne Dielman, 23, quai du Commerce, 1080 Bruxelles 1975)。 シャンタル・アケルマンの代表作です。 twitter.com ブリュッセルに暮らす、ある未亡人の三日間が200分の時間をかけて…

アンナの出会い|シャンタル・アケルマン監督

「シャンタル・アケルマン映画祭」で上映された「アンナの出会い」(Les Rendez-vous d'Anna 1978)を観てみました。 chantalakerman.foundation 映画監督の女性、アンナ(オーロール・クレマン)が、西ドイツからベルギー経由でフランス、パリに戻るまでの3日間…

オルメイヤーの阿房宮|シャンタル・アケルマン監督

各地のミニシアターで開催された「シャンタル・アケルマン映画祭」。 「オルメイヤーの阿房宮」(La Folie Almayer 2011)を観てみました。 chantalakerman.foundation 夜の川面とみられる情景に、「トリスタンとイゾルデ」の第1幕前奏曲冒頭(演奏はメータ指揮…

私、あなた、彼、彼女|シャンタル・アケルマン監督

「シャンタル・アケルマン映画祭」が各地のミニシアターで開催されました(主催はマーメイドフィルム)。 5作品。 いずれもデジタルリマスター版で、日本初公開なのだそうです。 twitter.com 「私、あなた、彼、彼女」( Je,Tu,Il,Elle)は、シャンタル・アケル…

検閲者の眼で観た「アンドレイ・ルブリョフ」

アンドレイ・タルコフスキー(1932-1986)の生誕90年を記念し、5月頃から各地のミニシアターで特集上映企画、「タルコフスキー、アトモスフェア」が開催されています。 eiga.com とっても当たり前のことですけれど、「生誕90年」ということは今年2022年、もし…

KOSUGI+ANDO「芳一」|兵庫県美「関西の80年代展」

現在、兵庫県立美術館で開催されている「関西の80年代」展(2022年6月18日〜8月21日)では、発表当時の展示を再現した大型のインスタレーションを、数点、観ることができます。 www.artm.pref.hyogo.jp KOSUGI+ANDOによる「芳一 物語と研究」は、1987年2月26日…

太田三郎の「災いと切手」|BBプラザ美術館

太田三郎展「人と災いとのありよう」 ■2022年7月5日〜9月11日■BBプラザ美術館 阪神・岩屋駅近くのBBプラザで太田三郎(1950-)の個展が開かれています。 この人の作品は東京国立近代美術館のコレクション展で代表作《Seed Project》シリーズを観たことがあるく…

鏑木清方と吉川霊華

京都国立近代美術館では、現在同館3階で開催中の「没後50年 鏑木清方」展(2022年7月10日まで)にあわせ、4階のコレクション展示室で清方ゆかりの作品や美人画を特集しています(こちらは7月18日まで)。 www.momak.go.jp 鏑木清方は1916(大正5)年、結城素明、平…

「玄奘三蔵絵」にみる幻想風景|藤田美術館の「水」

今年4月にリニューアル・オープンした藤田美術館。 当面、膨大な藤田コレクションの中から「曜」や「花」など複数のテーマを決めて逸品をピックアップし、数ヶ月単位で展示構成に変化をもたせながら、繰り回す方針をとっていくようです。 7月からは「水」と…

大成建設のル・コルビュジエ コレクション

調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ― 大成建設コレクションより ■2022年4月9日〜9月19日■国立西洋美術館 新館1階第1展示室(常設展エリア内) シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(Charles-Édouard Jeanneret あるいはCharles-Édouard…

イングマール・ベルイマン 日本最終上映3作

イングマール・ベルイマン(1918-2007)の没後15年にあわせ、各地のミニシアターが特集を組んでいます。 2018年、現在休館中の恵比寿ガーデンシネマ他で、監督生誕100年を記念し、まとめて代表作が上映されたことがありました。 今回はそれより規模が縮小され…

黒田辰秋 没後40年

黒田辰秋(1904-1982)の没後40年を記念し、現在、東京国立近代美術館の常設展エリアに彼のミニ特集コーナーが設けられています(2022年7月24日まで)。 コーナーの入り口に展示されている長椅子は、かつて、東近美本館の近所にあったレンガ造りの別館「工芸館」…

ジョン・エヴァレット・ミレイ「狼の巣穴」

改修工事を終え、今年2022年4月にリニューアル・オープンした国立西洋美術館。 2020年から約1年半に及んだ休館中にも、版画などを中心にコレクションを増やしていて、現在、常設展でその新収蔵品が披露されています。 www.nmwa.go.jp 中でも、ひときわ魅力を…

髙島屋東別館にみる大阪デパート興亡史

高島屋東別館・重要文化財指定記念展「大大阪の百貨店」 ■2022年3月5日〜7月4日■高島屋史料館企画展示室 昨年2021年8月、日本橋にある髙島屋東別館が国の重要文化財に指定されました。 これを記念して、建物3階の高島屋史料館によって企画された今回の展示は…

「アポロンの地獄」日本最終上映|パゾリーニ監督

ピエル・パオロ・パゾリーニの生誕100年を記念し、今年は「テオレマ」や「王女メディア」のリマスター版が各地で上映されました。 他方、上映権が期限を迎える作品もあって、「奇跡の丘」と「アポロンの地獄」が日本最終上映と銘打たれ、池袋の新文芸坐など…

梥本一洋 没後70年

没後70年 梥本一洋 〜優美なる日本画の世界〜 ■2022年6月4日〜7月31日■京都文化博物館 (2F総合展示室) 梥本一洋(まつもと いちよう 1893-1952)の没後70年を記念し、京都文化博物館でこの画家のミニ特集展が開催されています(常設コーナーの一部・特別展では…

ヘルツォークとチャトウィン|「歩いて見た世界」

「歩いて見た世界」。 原題は"Nomad: In the Footsteps of Bruce Chatwin"(2019)です。 そのまま「ノマド」でも良さそうですが、この言葉は、近年、「はたらき方」的意味が付与されてしまい、言葉として安っぽく陳腐化してしまいました。 また、映画の題名と…

国立西洋美術館とフォルクヴァング美術館

国立西洋美術館リニューアルオープン記念自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで ■2022年6月4日〜9月11日 約1年半、前庭の工事等によって閉館していた国立西洋美術館が今年4月に再オープンしました。 ル・コルビュジエによる当…

エリック・ロメール「四季の物語」

マーメイドフィルムの主催によるロメール特集「四季の物語」デジタル・リマスター版上映が各地のミニシアターで開催されています。 4本、連続鑑賞してみました。 kyoto.uplink.co.jp 「四季の物語」となっていますが、4本の制作時期は季節の遷移とほぼ関係は…

柴田俊雄・セザンヌ・鈴木理策

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策 ■2022年4月29日〜7月10日■アーティゾン美術館 アーティゾン美術館所蔵品をモチーフ、あるいは触媒にしながら、現代作家が共演するジャム・セッショ…

エベーヌ弦楽四重奏団|2022.6.18 びわ湖ホール

<室内楽への招待> エベーヌ弦楽四重奏団 ■2022年6月18日(土) 17時開演■びわ湖ホール(小ホール) ハイドン:弦楽四重奏曲 第34番 ニ長調 op.20-4 Hob.III-34ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」 シューマン:弦楽四重奏曲 第2番 ヘ長…

ゲルハルト・リヒターと「抽象絵画」

ゲルハルト・リヒター展 ■2022年6月7日〜10月2日■東京国立近代美術館 モダン・アート分野におけるおそらく今年最大の注目展、ゲルハルト・リヒター展が東近美で開幕しました(10月15日から豊田市美術館に巡回)。 それなりに多くの観客がいましたけれど、大型…

蘆花浅水荘 山元春挙と上村松園 最後の会話

琵琶湖畔にある山元春挙(1872-1933)の別荘、蘆花浅水荘(ろかせんすいそう)を見学してみました。 普段は予約制をとっていますが、現在、滋賀県美で開催されている「生誕150年 山元春挙」展と連動するかたちで、土日のみ、事前予約なしで見学を受け付けていま…

ノロワ|ジャック・リヴェット監督

「ノロワ」(Noroît)は1976年の制作。 今回の「ジャック・リヴェット映画祭」で初めて日本劇場公開される作品中の一本です。 ジャック・リヴェット Blu-ray BOX Ⅱ 紀伊國屋書店 Amazon パリやその郊外など、都市とその周辺での出来事が描かれることが多いリヴ…

ダネル弦楽四重奏団のショスタコーヴィチ 講義

ダネル弦楽四重奏団によるレクチャーコンサート ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲 ■2022年6月9日 19時開演■びわ湖ホール(小ホール) ダネル弦楽四重奏団(Quatuor Danel)は、今までショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全曲演奏会を32回、全曲録音を2回行ってい…

セリーヌとジュリーは舟でゆく|ジャック・リヴェット

各地のミニシアターで上映されている今回の「ジャック・リヴェット映画祭」では、5本中、3本が日本劇場初公開です。 「セリーヌとジュリーは舟でゆく」(Céline et Julie vont en bateau 1974)は「北の橋」とともに本邦公開済みの作品です。 おそらく十数年前…

ブライアン・イーノ|AMBIENT KYOTO

BRIAN ENO AMBIENT KYOTO ■2022年6月3日〜8月21日 (9月3日までの会期延長)■京都中央信用金庫 旧厚生センター ブライアン・イーノの日本における絶頂期はおそらく前世紀末の10〜20年間くらいでしょうか。 実際、この企画を観に来ているお客さんの中には、その…