2023-01-01から1年間の記事一覧

八木一夫「ザムザ氏の散歩」と京都|走泥社再考展

開館60周年記念走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代 ■2023年7月19日〜9月24日■京都国立近代美術館 京近美、開館60周年記念シリーズの第三弾です。大小180点あまりの作品で埋め尽くされた、前代未聞の「走泥社」大総括展。アニバーサリー企画にふさわしい、と…

東京海上 新本社ビルの「高さ」|レンゾ・ピアノ&新宮晋展

Parallel Lives 平行人生 ー 新宮 晋+レンゾ・ピアノ展 ■2023年7月13日〜9月14日■大阪中之島美術館 レンゾ・ピアノ(Renzo Piano 1937-)の建築作品と新宮晋(1937-)の彫刻作品をパラレルに、彼らのバイオグラフィとあわせて紹介するという極めてユニークかつ…

「キングダム・エクソダス〈脱出〉」(L.v.トリアー) 備忘録

シンカの配給で7月上旬からスタートした「ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ2023」が盛況のうちに終わり、かわって、ついに彼の最新作「キングダム・エクソダス〈脱出〉」( Riget Exodus 2022) が公開されました(2023年7月28日から順次全国展開)…

「雨にぬれた舗道」の鍵|ロバート・アルトマン傑作選

マーメイドフィルムの主催、コピアポア・フィルムの配給で、『ロバート・アルトマン傑作選』(3作品)が各地のミニシアターで上映されました。 「雨にぬれた舗道」(That Cold Day in the Park 1969)は、本邦劇場公開済みですが、国内ではソフト化も配信もされ…

松本涼の髑髏と青木美歌の粘菌|「超絶技巧、未来へ!」展

超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA ■2023年7月1日~9月3日■あべのハルカス美術館 今年の2月から岐阜県現代陶芸美術館を皮切りに各地を巡回しはじめた「超絶技巧、未来へ!」展。 長野(長野県立美術館)での展示を終え、現在、天王寺で大阪展が開催されてい…

浄瑠璃寺の秘仏 薬師如来 |「聖地 南山城」展

浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念特別展「聖地 南山城 ー奈良と京都を結ぶ祈りの至宝ー」 ■2023年7月8日〜9月3日■奈良国立博物館 奈良博、今年度における渾身の大企画、「聖地 南山城」展が開幕しています。 鹿たちもグッタリしている灼熱の奈良公園内。 しか…

「CLOSE / クロース」の時間表現|ルーカス・ドン

各地のミニシアターで評判になっている、ルーカス・ドン(Lukas Dhont 1991-)監督作品、「CLOSE / クロース」(Close 2022)を観てみました(配給はクロックワークス)。 予告編をみた段階では、「ありがち」な映画かもと、さほど期待していなかったのですが、意…

「ラヴ・ストリームス」|カサヴェテスが描く「荷物」

ザジフィルムズの配給で、ジョン・カサヴェテス(John Cassavetes 1929-1989)の回顧上映特集が各地のミニシアターで開催されました。 「グロリア」を除く、代表作6作品がラインナップされています。 素晴らしい企画だと思います。 www.zaziefilms.com 「ラヴ…

左手と右手 どちらから先に爪を切るか|ニンフォマニアック

ラース・フォン・トリアー(Lars von Trier 1956-)の「ニンフォマニアック」(Nymphomaniac 2013)が彼の大回顧上映企画の中で公開されました。 映画『ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ2023』公式サイト この映画は、すでに2014年、本邦でも劇場公…

ビデオドローム・裸のランチ・エピデミック

デヴィッド・クローネンバーグ(David Cronenberg 1943-)の古典的代表作、「ビデオドローム」(Videodrome 1983)と「裸のランチ」(Naked Lunch 1991)が、各地のミニシアターで、たてつづけに再上映されました。 いずれも4Kレストア版。 映像のもつ空気感までも…

「ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦」

今回の「ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ 2023」(配給 シンカ)では、なかなか体験することができなった珍しい作品を観ることができます。 「ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦」(The Five Obstructions 2003)もそうしたマイナー系作品の一本…

「遺灰は語る」|パオロ・タヴィアーニからの挨拶

パオロ・タヴィアーニ(Paolo Taviani 1931-)が、はじめて兄との共同ではなく、単独で監督した映画、「遺灰は語る」(Leonora Addio 2022)が公開されました。 moviola.jp 91歳。 一個の、パオロ・タヴィアーニとしてのデビュー作です。 100歳を超えてからも素…

トリアー「イディオッツ」とドグマ95の快楽

各地のミニシアターで上映が始まっている「ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ2023」。 「イディオッツ」(Dogme # 2: Idioterne 1998)を鑑賞してみました。 4Kデジタル修復版です。 映画『ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ2023』公式…

エレメント・オブ・クライム|ラース・フォン・トリアー

ラース・フォン・トリアー(Lars von Trier 1956-)の大回顧特集が、新宿のシネマート他、各地のミニシアターで開催されています(2023年7月7日より順次公開)。 最新作「キングダム エクソダス(脱出)」の公開にあわせ、14もの過去作を一気に上映するという、嬉…

鎌田友介とアンドロ・ウェクアの「家」|国立国際美術館

特別展 ホーム・スイート・ホーム ■2023年6月24日〜 9月10日■国立国際美術館 なにやら郷愁を誘うようなタイトルがつけられていますが、この美術館の企画展ですから、当然、その内容はまったく甘くはありません。 大画面の映像作品や、凝ったインスタレーショ…

ゴダール「パッション」にみる「絵画への苛立ち」

昨年91歳で亡くなったジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard 1930-2022)の追悼映画祭が各地のミニシアターで開催されました(マーメイドフィルム主催 コピアポア・フィルム配給)。 ttcg.jp 「パッション」(Passion 1982)もこの映画祭でとりあげられた一…

伝徽宗に伝銭選・・「伝 唐物」の美|中之島香雪美術館

企画展「唐ものがたり 画あり遠方より来たる-香雪美術館の中国絵画-」 ■2023年6月17日~7月30日■中之島香雪美術館 初公開作品を含む、かなり渋めラインナップで組まれた「裏技的」中国画特集です。 村山コレクションの奥深い魅力と、捻りが効いた企画アイ…

曾我蕭白の西王母|相国寺承天閣美術館「女性と仏教」展

禅寺に伝わるものがたり Ⅱ期 女性と仏教 ■2023年5月28日~7月16日■相国寺承天閣美術館 女性で初めて無学祖元の教えを継いだといわれる鎌倉時代の尼僧、無外如大(1223-1298)の生誕800年を記念して企画された展覧会です。 あわせて徳巌理豊尼、逸巌理秀尼とい…

ウェッジウッドとミントンの分岐点|ボタニカルアート展

英国キュー王立植物園 おいしい ボタニカル・アート 食を彩る植物の物語 ■2023年6月10日〜7月23日■西宮市大谷記念美術館 新宿のSOMPO美術館、静岡市美術館と、昨年から各地を巡回している英国ボタニカルアート展。現在、香櫨園の西宮市大谷記念美術館で開催…

狩野益信 の「龍」|泉屋博古館「歌と物語の絵」展

企画展 歌と物語の絵 -雅やかなやまと絵の世界 ■2023年6月10日〜7月17日■泉屋博古館 住友家伝来の日本絵画コレクションから、和歌と物語文学をテーマに作品を選りすぐった企画展です。 この美術館の名物「是害坊絵巻」をはじめ、竹取、伊勢、源氏、平家と、…

橋本関雪と戦争画|白沙村荘 橋本関雪記念館

生誕140年 橋本関雪 KANSETSU ー入神の技・非凡の画ー ■2023年4月19日〜7月3日■白沙村荘 橋本関雪記念館 京都市内、三つの会場で展開されている橋本関雪の大回顧展。 嵐山の福田美術館&嵯峨嵐山文華館での共催展を鑑賞後、もう一つの会場である東山、銀閣寺…

金森宗和好みの仁清茶入|京都国立博物館 新収品展より

特集展示 新収品展 ■2023年6月13日~ 7月17日■京都国立博物館 (平成知新館 2F) 先日まで開催されていた特別展「親鸞」から、秋の「東福寺」展(10月7日〜12月3日)までの端境期。 現在、京博ではコレクション展が開催されています。 令和3年度(2021年から22年)…

嵐山の橋本関雪展|福田美術館&嵯峨嵐山文華館

橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU ー入神の技・非凡の画ー ■福田美術館・嵯峨嵐山文華館 ■2023年4月19日〜7月3日 嵐山の2館と、銀閣寺道の白沙村荘を舞台に、橋本関雪(1883~1945)の大回顧展が開催されています。 いよいよアフターコロナの観光公害がひどくな…

是枝裕和「怪物」に響く坂本龍一「怒りの日・・」

先週末から話題作「怪物」が公開されています。 そろそろ落ち着いてきた頃かもと思い、鑑賞してみました。 gaga.ne.jp 「湖のある静かな街」が舞台、と予告編で紹介されています。 本編ではその湖が「諏訪湖」であることが冒頭から映像でしっかり示されてい…

フランソワ・オゾン「苦い涙」の多層構造

フランソワ・オゾン(François Ozon 1967-)監督の最新作、「苦い涙」(Peter von Kant, 2022)がこの週末から各地のミニシアターで公開されています。 傑作、といえるほどの感想は、正直、もてなかったのですけれど、後からジワジワとその「構造」を訴えかけて…

マスプロ美術館の青磁「鎹」と馬蝗絆伝説|織田有楽斎展

現在、京都文化博物館で開催されている「織田有楽斎」展。 (2023年4月22日~6月25日・ 来年初春にはサントリー美術館に巡回)。 正伝永源院所が所蔵する有楽斎関連の書状や文書などの比率が高く、総じて渋めの展示構成なのですが、さりげなくビジュアル系の貴…

絵金展にみる土佐の熱|あべのハルカス美術館

恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金 ■2023年4月22日~6月18日■あべのハルカス美術館 絵金(えきん 「絵師の金蔵」1812-1876)は土佐で活躍した絵師です。 地元である高知県の外で開催される彼の大規模回顧展は、約半世紀ぶりなのだそうです。 月岡芳…

本野精吾 栗原邸(旧鶴巻邸)・御陵のモダニズム

山科、御陵にある栗原邸が一般公開されたので見学してみました。 今回の公開は2023年5月27,28日と6月3,4日の4日間です。 www.d-lab.kit.ac.jp 一般公開を主催しているのは石田潤一郎京都工芸繊維大名誉教授を委員長とする「栗原邸保存研究会」とリビングヘリ…

大徳寺 「唐門・三門・勅使門」特別公開

大徳寺本坊の一部が特別公開されたのでお邪魔してみました(期間は2023年4月27日〜6月4日)。 prtimes.jp 大徳寺の中心伽藍にある建物群は、方丈等を除き、外側からであればいつでも観ることができます。 今回、「特別公開」とされているのは、三門の一階部分(…

ケフェレックが「語る」ベートーヴェン|MIRARE

Beethoven the Last 3.. アーティスト:Queffelec, Anne Mirare Amazon 先日、アンヌ・ケフェレック(Anne Queffélec)のリサイタルを聴きました。 演目はベートーヴェンの後期三大ソナタです(2023年5月12日 上桂 青山音楽記念館バロックザール)。 とても味わい…